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「他力本願」

須田 勉(米2/神奈川県出身)

 

 約1年間アメリカで研修してきた今、私にとって一番大切なことを学んでいると思います。それは、人に依存すると積極性や意思、自信がなくなるということです。

 短期実習時、英語が理解できない私は先輩研修生のリーダーに頼っていました。ボスの言うことがわからないのでいちいちリーダーに聞いて作業内容を理解していました。しかし、そうすることが段々と面倒になり、また私としてはあまり他人に頼るというのは好きではないので、時々私の解釈で行動することがありました。私のボスはとても優しい人だったのでそのことで怒られたことはなかったのですが、同級生に注意を受けました。その人から見ればトンチンカンなことをしていたというのか、その時優先すべき作業ではないことを自分勝手にしていたと映ったのでしょう。私としては、周りを見て状況判断して優先される作業をしていたと思っていましたが、そうではなかったようです。

 私は三食常にボスを一緒に食べていたので、そのときに話す機会があったのですが、英語に自信がないので次第にボスとあまり話さなくなりその結果、ボスはほかの同級生とよく話をし、私はボスとのコミュニケーションが取りづらくなりました。一人だけ話題についていけなく取り残されたようで疎外感を感じました。今思えばもっと懸命に話しかけるべきでした。会話ということを人に頼った結果、私自身が多く悩む羽目になりました。

 人に頼るということは簡単で楽をできるかもしれませんが、徐々に失っていくものも多いような気がします。最初に自信をなくし、他人の意見と行動に流されやすくなります。他人の意見や行動で判断するので、優柔不断と不安が付きまとい、何より自分に妥協が生じ、積極性または意思が弱くなります。段々と他人に頼り、自分を甘やかしていくことになるでしょう。

 しかし、自分の意志を持ち行動を起こし、うまく行った場合は充実感と満足感に満たされ、自信を持てるようになります。また情報や経験を得てさまざまな場面に対処できるようになります。

 最近家のバスルームのドアノブが壊れ、最初はボスに頼んで直してもらおうと思いましたが、結局自分たちでノブを買って修理することになりました。ただそれだけのことでしたが、私にはこの出来事が新鮮でなりませんでした。なぜなら、ノブを交換修理したことがなく、構造を知らなかったからです。それに、ボスに修理を頼んでいたら自分たちの希望通りの物になっていたかわかりません。自分または自分たちで何とかすることでいろいろな利益があるのだと感じました。この一件から私は学び、一つよい経験ができたと思っています。

 Oregon Roses Inc.で私たちのボスや会社の人々に自分が思ったことを伝える意志を持つようになってから、英会話に関しても私に積極性または、意志をいうものが少し芽生えたと思います。積極性や意志を持つことはこれからの人生で大変重要なことではないかと思います。なぜなら意志がなければ何も起きないからです。私はこのことを今後の人生につなげていこうと思います。

 
 
※この原稿は『北米報知新聞7月2日号』に掲載されたものです。