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新聞記事を見てから2年…
あこがれのデメター農場へ
<連載 第7回

柿谷信実(スイス研修生:高知県出身)
 


 九月になって、ちょっと遅めの夏休みをとった。国際農業者交流協会のプログラムでは夏一週間、春二週間、自由に旅行できることになっている。旅行と言われても、あたしは観光にはあんまり興味がなかった。でもせっかくだから一週間びっしり楽しんだ!

 最初にドイツに足をのばした。そう! 二年前、この農村報知新聞で読んだその農場を、この目で見たいと思ったから。幸い、今年そこに派遣された研修生と仲良しだったので、勇気を出して「行ってみよう!」と思えた。

 連絡をとってみてビックリ!! 二年前そこで研修していたOB、つまりあの新聞の原稿を書いた本人が今そこにいるという話を聞いて「あたしこの人に会えるのかしら?」と思い、まだ手元にあるその記事を見つめ直した。何とも言えない緊張感をもちながら、いざドイツへ! ホームに降りると二人そろって(現研修生&元研修生)お迎えに来てくれていた。握手した。思ったほど緊張も興奮もしなかったけど、一人、心の中で感動した。

 その日の午後、デメター農場を見学させてもらった。(デメターとはドイツの思想家“シュタイナー”の思想を基に天文学も関係した、よく分からないけど、有機に近いとも思える、ほとんど完全、循環型の農法だと思う… ちなみに辞書で引くと、ギリシャ神話の収穫の女神の名前「デメテル」だった)。あいにく前の晩、麦のジュースを飲み過ぎて体調は良いとは言えなかったけど、デメターをこの目で見たことに変わりはない。

 第一印象は「草がいっぱいだ!」と思った。そして、たまに動物の骨が土に混じっていると聞いて、辺りの畑を見回したけど、見つけられなかった… ちょっと残念。でも別の所に牛のガイコツが三つならんでた。「オー、おっとろしー」と思いながらまじまじ見たけど、ガイコツはガイコツだった。そんなところにドイツの他の研修生もやってきて、合計七人の日本人が集まって、またまた話にお花が咲いた。

 次の日「仕事を手伝ってもいいよ」とのお誘いに、時間の許す限り乗り、朝飯前と昼飯前の収穫を手伝わせてもらった。収穫はどこでやっても同じようなものだけど、夢にまで見た(見てないけど…)デメター農場で作業してると思ったら、バカみたいにニヤけてきた。「これって夢が一つ実現したってことかね?」と自分と相談した。

 二年間「行きてー」と思っていたデメター農場。ここを知ったきっかけとなった彼を、私は二年間ねたましく思っていた。お隣の県の農大を出て、ドイツで面白そうな研修をしている人がいると思うだけで、希望にもなったけど、本当は悔しかった。私にもそれができるのかどうか考えるたびに、出る答えは悔しさの混じった「クソッ」だった。

 農大の寮の部屋の壁にぶらさげた写真つきの新聞記事をボーッと眺めながらそう思っていた二年前… その彼も一緒に作業をしている。やっぱり来年じゃなくて今年、この研修に来れてよかったと思った。いろんな偶然が重なってつながった人の輪。単なる偶然か否か。どっちにしても大きな収穫だった。

 そのほかにもこの一週間の休みに何人かの研修生のおうちを訪ねて、楽しい晩餐会をしたり、スイスをくるっと観光したりした。なかなか楽しい一週間だった。おかげで家事にあきあきしていたので、良い気分転換になった。 
 さーて、明日も掃除機片手に頑張りますか!!


 
 
※この原稿は『農村報知新聞10月号』に掲載されたものです。