JICA職員としてベネズエラに赴任された小金丸梅夫OB(千葉/S44/米1)からメールが届きましたので、ご紹介いたします。 ベネズエラ近況報告(5) 親愛なる皆さんへ
今も農学徒と自認する私は、途中の農業・農村風景観察や郷土料理が好きなため、移動手段は飛行機より車が好きです。長距離や数日間の車移動には体力が必要ですが、体力耐用年数にはまだ程遠いと自負しています。 カラカスから約250kmのMorrocoy国立公園まで車で約4時間。途中アラグア州都Maracayとカラボボ州都Valenciaを結ぶ高速道路を走ります。車窓から間近に見える山並みの植生は、年間少雨で乾季のため落葉しているようで元気がありません。狭い谷間で見られる農作物はサトーキビ一色ですが、南アのダーバン郊外やマラウイ湖岸で見たサトーキビ・プランテーションの規模にはとても敵いません。Morrocoy国立公園までの250kmの道路沿線の視界で、サトーキビ以外の農作物の商業栽培は皆無でした。余程この国この国民は農業に関心がないようです。 ファルコン州に入って間もないTucacasの町で、上記NGO「FUDENA」が漁民グループを対象にセミナーをやっており、同NGO所属の協力隊員2名も講師としてレクチャーをしているということで、その場で隊員活動の一部を拝見しました。日焼けし頑丈そうな体躯の漁師約20名を相手に、FUDENA支所長が司会役でベネズエラ人1名と協力隊員2名が講演。同支所長は元JICA第3国研修員として、チリで水産養殖研修を受けており、日本水産技術の信奉者であり親日家でもあります。我隊員2人は日本の漁業協同組合の組織活動とカキの種(幼生)採集技術について、スペイン語で約20〜30分間づつ講演してくれました。決して流暢なスペイン語とはいえませんが、2人とも日本の離島漁村出身なためか、べ国カリブ海沿岸漁民にシンパシーを持っているように見え、性格も人柄も良く安心しました。
セミナー終了後、Tucacasから車で約20分で初日の最終目的地Chichirivicheに着きました。ここはMorrocoy国立公園のど真ん中で、この町はマングローブなど耐塩植生に覆われた平坦な半島の先端に位置しています。この国立公園の総面積は32,090ha、見所は珊瑚礁からなる無人島郡、マングローブ、鳥類(ペリカン、サギ、鵜、鴨、トキなど)を中心とする野生動物、隆起珊瑚礁の洞窟などです。直ぐ沖合いのカリブ海に浮かぶ珊瑚礁の島へお客を運ぶ、沢山の船外機付ボートがChichirivicheの海岸近くに錨を下ろし待機しています。FUDENA支所長、ベネズエラ人セミナー講師、協力隊員、我々出張者計6人、ウォーターフロントのシーフード・レストランでカリブ海の潮騒と海風と潮香りを快く感じながら、新鮮美味な海鮮料理を満喫しました。あ〜あ〜、この新鮮な鯛(Pargo)を、カラカスに持ち帰り握り我が家で寿司にして食べたい! 遅めの昼食を終えた後、船外機付ボートをチャーターし、FUDENA支所長の案内で広大なマングローブ林の迷路みたいな水路をゆっくり進みながら、天然カキ生息状況を観察しました。マングローブ林の無数の気根の喫水線あたりに天然カキが付着しているのです。FUDENAも漁民達も、このままマングローブの天然カキの採集乱獲では先がないと理解し、カキ養殖の成功が悲願となりつつあり、そのために水産隊員の要請がなされたのです。ベネズエラではまだ商業的カキ養殖の成功例はなく、そのためこの分野でも成功一番乗りの日の丸を掲げたいところですが、問題があるのです。
マングローブ天然カキ見学の後、ChichirivicheのFUDENA支所で支所長、隊員との合同会議でわかったのですが、この国立公園内でのカキ養殖の許可が環境省からまだ下りず、FUDENAの予算も潤沢でなく、所有するボート一隻の船外機の修理にも不自由しているのです。これまで欧米系NGOや援助機関から資金協力や技術協力を受けている反面、現チャべス政権からの援助はもらっていないのです。ベネズエラでの商業的カキ養殖を成功させるべく、それにチャレンジしているFUDENAにべ政府から多少の助成金なり補助金なり出てもおかしくないと思うのですが、どうも現政権と仲がよくないようです。同支所長から漁民グループの海外視察研修(1週間)への協力も要請されましたが、オイルマネー豊富なべ国政府と参加受益者による旅費全額負担の条件が満たされたら、過去のJICAの技術協力で設立されたチリやペルーの水産技術訓練施設を見学できるか、当該JICA事務所に相談してみようと回答しておきました。
翌朝、ホテルの水が出ないので、フロントで5星なのに何故水が出ないのだと一文句を言い、ホテル代込みのカリビアン朝食で機嫌直しをして、午前8時陸路200kmのファルコン州都Coroへ向けて出発西行。途中チョットだけ道路沿いの立派な牧場郡を見て期待しましたが、それ以外全く農業らしい農業が車から見える視界の中に入ってこず、がっかりしました。新聞では新任の農業大臣が、抱負として食料自給率の改善を力説していますが、何処まで本気で何時になったら成果が上がるのか、これまでこの国の政府と国民は、農業に全く関心がなかったのかも知れません。農業発展と美味いエスニック料理のサポートがないと、観光業の大発展はありえないというのが私の持論で、その土地独特の美味い料理があり、胃袋で味わった魅力は、風景の魅力より根強いのだ、だから旅のリピーターになるのだと言って、食いしん坊振りを発揮し、周りの食客を甚く納得させています(?)。 話が脱線してすみません。JICA専門家と風土的途上国開発論を語りながら車中3時間を経て、11時過ぎに協力隊員(経済)が下宿するCoro市の民宿に着きチェックインした後、隊員に案内してもらいローカル食の美味いレストランで昼食。当地はやや乾燥地で山羊の飼育が比較的盛んらしいので、山羊肉料理とパイナップルとグアバの絞りたてジュースで大満足。満腹で機嫌よく中心街のBanMujer(女性銀行)ファルコン州支店ヘ。 ファルコン州支店と言っても約100uの小さな事務所。女性支店長以下数人の女性職員のみで、隊員はその中の逆紅一点。支店長は小太りの50代女性で眼鏡の奥には小さくも眼力の強そうな目が。開口一番、協力隊員の問題は語学能力だけで、それ以外は何の問題もないとのこと。元ウーマン・リブの闘士だったのかと思えるくらい、当方質問に対し発言は厳しくも明解でプライドも強い。全州25県で2,000件以上の融資事業を実施しており、隊員報告書で知った融資返済焦げ付きや失敗案件には殆ど言及しない。協力隊員への期待もノルマも高く、スペイン語能力が不十分なので、カラカスで再度1ヶ月間語学特訓を受けさせてから、再配置してくれと私に直言する。隊員の内気さと語学不足により、女性顧客への融資相談や融資事前講習会での彼の説明は力不足だと、隊員の前でもずけずけと発言する。押され気味の当方の回答は、中南米経験豊富な専門家と比較されたら隊員がかわいそうだ、活動を通して徐々にスペイン語を習得していくので、支店長女史も辛抱して欲しい、彼の日本での経験と今の隊員活動がミスマッチとは思われないので、上手く彼のノーハウと経験を引き出して生かしてくれと弁明し、どうにか了解していただいた模様。 厳しい評価をされた隊員には、融資案件の関係資料を毎日徹底的に音読し暗記してしまうぐらいスペイン語に慣れたらよい、そうすれば顧客への融資相談もよりスムーズになるだろうと、アドバイスしておきました。厳しい評価にもかかわらず彼は案の定と思い、気落ちしていないので、今後の彼の評価挽回に期待しています。時間的余裕があったら、ファルコン州の社会経済状況の現状と問題点を調査研究し、竹内宏の名著「路地裏の経済学」のファルコン州版作成にチャレンジしたらどうか、そうした社会・経済的背景をベースにして、今後ファルコン州に対しどんな職種の協力隊員を何処に何人配置すれば、戦略的により良い成果が上がりそうか、経済隊員である君のアイディアを出してもらいたい、僕は現場主義だからカラカス中央官庁役人の作成した要請よりも、現場の協力隊員のアイディア要請を尊重したいと、激励しておきました。 翌朝(出張3日目)、彼の下宿先である民宿の中庭で一休みしている間にハチドリが1羽飛来したのですが、滞空しながら庭木の花から密を吸う超美技に見惚れる間に、写真撮影を忘れてしまいました。隊員に聞くとハチドリの来訪は毎朝毎夕ほぼ定刻的に行われているそうです。余談ですが、私も国際協力を引退したら故郷でこんな民宿を経営したいと思っています。
朝食後、先ずCoro市から北へ延びる砂丘を見学し、サボテンと共生する懐かしいAlgarroboの群生を見ました。ペルーやチリの海岸砂漠に自生する耐乾性、耐塩性マメ科植物で、アフリカ・サブサハラの砂漠化防止のために 植林したいと思っている有用植物です。Algarroboを見てアフリカが恋しくなりアフリカへの思いが熱くなりました。午後1時過ぎの飛行機でカラカスへ出発するまでの間、隊員の案内で世界遺産になっているCoro市の歴史博物館や玉石街路を散策しました。Coro市は、アフリカ勤務時代に見学したイタリアの世界遺産都市ベニスやフローレンスには敵いませんが、ベネズエラでは確かに文化と歴史を感じさせる落ち着いた街として、一生印象に残りそうです。 飛行場の売店で特産のDulce de leche(家畜の乳でできた甘いお菓子)をお土産に買い、19人乗りの小型プロペラ機は定刻離陸し、一時間足らずで無事カラカス国際空港に着陸しました。残り数回できるだけ早めに他の隊員活動現場を訪問して、この国に於ける協力隊活動の分布状況を把握し、安全と成果の観点から今後の隊員の配置に知恵を絞りたいと思っています。 今回は長文となり、皆様の顰蹙を買うことになると心配しながら、カットすることなくこのまま送信させて頂きます。 おげんきで! 小金丸拝 |
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