欧州支部便り(過去ログ)

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ここでは駐在員の日常から欧州の暮らしを紹介していきます。

本ページで扱っている記事は、JAECホームページ欧州支部便りに掲載されたものです。



目次

2009

60.●ドイツの中のトルコ--ケバブと外国人労働者の話し
60.●機械にお任せ--真心を込める自動販売機
59.●客とキャク--客にも2種類あるのです
58.●寒い冬--今年の冬は寒かった!

2008

57.●医療保険--医療保険を比較してみる
56.●アイフェルのF1サーキット--ニュルブルクリンクサーキット
55.●遊園地--自己責任と安全性
54.●食品添加物--食品添加物について思うこと
53.●日本食ブーム--寿司がきっかけで広まっています
52.●アフタヌーン--虫に対するドイツ人の態度
51.●乳価高騰--ドイツで乳価が高騰。その後ストライキ
50.●ハーフマラソン--ボンエネルギーマラソンに参加しました
49.●日本語を学ぶ--日本語を学ぶ場について
48.●ドイツで子育て--どこでも子育ては大変です。ドイツの事情
47.●ありがとう日本--一時帰国に際して思うこと

2007

46.●ヴォジョレー・ヌーヴォー--解禁によせて…
45.●旧東ドイツへ--メクレンブルク=フォアポメルン州へ行ってきました
44.●育児休暇--意気地なしの育児無し!
43.●車の好み--日本車が売れています
42.●体感時間--ドイツの鉄道を利用して思うこと
41.●つぶれる商店街--どこも世知辛いものです
40.●IKEA--スウェーデンの家具メーカー
39.●妊娠・出産インフォアーベントについて
38.●嗜好の変化?--ドイツに来て変わりました
37.●健康意識--本当の健康食って何?
36.●リンゴの味--あなたの好きなリンゴの味は?

2006

35.●つぶれない店--すごく疑問に思っていたこと
34.●インターネット--早いことの功罪
33.●語学学校--外国人との楽しい勉強
32.●自転車--本当に大丈夫なの、その乗り方?
31.●置き引き被害--くれぐれもご注意を!
30.●指輪--指輪の意味
29.●切符自動販売機--自販機は便利の代名詞?
28.●病院食--病院食は美味しい!?
27.●乾燥と体臭--乾燥と体臭の結びつき
26.●引越し--ドイツで引越しをしてみた
25.●春ですね--冬に咲く花
24.●花火--ドイツの花火の季節とは?

2005

23.●民間療法--風邪をひいた時の一風変わった対処法
22.●話法能力--語学力は必要です
21.●レストラン--ドイツレストランシュミレーション
20.●黙礼--日本の美徳と小さな誤解
19.●異常気象--身近で起った異常について
18.●環境保護--ドイツの環境保護を考える
17.●卵2--卵のトレースアビリティーについて
16.●卵1--卵を食べる
15.●抱負--新研修生がやってくる
14.●自由な食事--ビュッヘのマナーについて
13.●甘党--甘いもの大好き、ヨーロピアン
12.●ベルリン食の見本市--Grüne Wocheへ行ってみよう!

2003-2004

11.●肉文化--肉を食べる
10.●高速道路--ヨーロッパ高速道路事情
09.●夕暮れ時に--センチメンタルな季節
08.●芸術の秋--秋といえばコンサート
07.●お墓--お墓に見る日欧の違い
06.●サッカー--2004年ヨーロッパカップ
05.●方言--地域性を感じる方言について
04.●電車に乗って思うこと--ドイツ人は満員電車に上手に乗れるのか?
03.●アウトドア派--ドイツ人が好きなことは?
02.●流行1--2004年にドイツで流行っていたものは?
01.●クリスマス市--ドイツ各地で開催される冬の風物詩より



クリスマス市          2003年12月

ドイツ、ボンの日照時間はもう随分と短くて、朝暗闇の中出勤して夕方闇夜に帰宅する毎日です。 気持ちまで暗くなりそうなこんなドイツのこの季節、クリスマス市が各地で開かれています。どんな市かと申しますと、 たくさんの屋台が並び、お菓子やクリスマスの飾り、暖かい手袋、靴下、帽子が売られ、何と言っても美味しい 立ち食いの屋台が並びます。勿論ヤキソバやたこ焼きはありませんが、ドイツならではの食べ物がよりどりみどり道行 く人の手に握られます。大きなワッフルやクレープ、長いソーセージや豚肉・羊肉の焼肉。ジャガイモを摩り下ろして 油で揚げたライベクーヘンはリンゴのムースと一緒にどうぞ。そしてど肝を抜かれるのがバックフィッシュという 食べ物。淡白な白身魚(タラ?)の半身に大量のころもをベットリ付けて一気に揚げたものなのですが、 それが小さな丸パンに無理やり挟まれて出てくる様は迫力万点!普通ドイツ人はこれを1人で平らげますが、 量も油もタップリなので1人で1個完食するのはなかなか大変です。さて、口がベトベトになったらこの季節よく飲まれる温かいワイン、 グリューヴァインを一口。お腹が満たされ、酔いもまわり、華やかなクリスマスの装飾を眺めながら何だかとても 楽しい気分になります。今日もクリスマスが来るのを心待ちにするドイツの人々の笑い声が空高く響いています。

lecker!!
ドイツの冬を丸かじり!!
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流行1          2004年3月

ドイツは今日本ブームです。日本の漫画やアニメ、日本映画、寿司をはじめとした日本食、格闘技のK-1など日本文化が 広く取り上げられています。音楽番組のプロモーションビデオに日本風景が使われたり、園芸展に行けば『Bonsai』の 文字の前に多くの人が足を止めます。地球の反対側の全く違う文化を興味津々見つめています。そんなドイツ人の視点 で日本を見つめるととても面白い(奇妙な)側面に出会う事があります。今日はそんな瞬間を紹介します。
先日テレビで大相撲の九州場所を放送していました。大型の力士がぶつかり合う様は迫力があり、見ていて思わず歓声 を上げてしまいます。特に結びの一番など会場中が熱気に包まれ最高ですよね。さて、この結びの一番で波乱が起こる と日本ではその瞬間固定カメラで土俵全体を映すか力士の表情に迫ります。ところが、ドイツではまず座布団投げの観 客を一生懸命放送します。勝った力士と同じぐらい高揚した表情で力いっぱい座布団を投げる女性を追いかけ、ここぞ とばかり立ち上がるご老人にアップで迫る。まるで座布団投げこそ相撲の醍醐味であるかのように…。相撲は見せる側 と見る側で構成されるということでしょうか。
また、日本食を食べる際にはドイツ人も箸に挑戦します。つかんだ寿司を醤油皿にポチャンと落としてしまうのは日常 茶飯事ですが、どこで教わるのか多くのドイツ人は不慣れながらも非常に正しい箸の持ち方を修得しています。アジア 人の専売特許であった箸もヨーロッパで一般化してきたという事でしょうか。あるいは律儀なドイツ人を示す象徴的な シーンというのでしょうか。試行錯誤して箸を使う姿は微笑ましいのですが、日本でも正しくない持ち方をする人はい るわけで、彼らが悪戦苦闘しながら肉じゃがに立ち向かう様子をただ笑ってみることはできないと思います。
さて、最後に少し話は変わりますがもう一つ紹介します。この花粉症の季節とめどない鼻水に苦しむのはドイツも一緒 ですが、鼻をかむ時奏でられる音が違います。音がでかいです。日本では人前で鼻をかむのはなかなか恥かしかったり 、ましてや食事中は鼻をすすり耐える人もいるくらいですが、ドイツでは力いっぱい何処でも誰でも思いっきりかんで います。大きな鼻から発せられる壮大な音は日本人の鼻をかむ音とは随分違います。ちなみにドイツ人は鼻をすする音 が嫌いです。日本人は鼻水が出そうになったら思わずすすりますが、ドイツにおこしの際はぶ厚いドイツ製の ティッシュペーパーで思いっきり鼻をかむ方が正解です。
考え方が違ったり、興味がずれていたり、時としてそのギャップは苦悩の原因になりますが、それでも日本に興味を 持ってくれるドイツ人が少しずつ歩み寄ってくるように、我々日本人も文化を惜しみなく紹介していけると良いなあと 思います。

兜は似合うかな
ゲストファミリーと一緒に

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アウトドア派          2004年4月

暖かい陽気が気持ちの良い季節がやってきました。ライン川沿いの公園や街頭では枝を覆い隠さんばかりに花を咲か せた桜が見事です。庭先ではスイセンもひしめき合って黄色いラッパを春風になびかせています。ミツバチがプリメア やパンジーの上を忙しそうに飛び交い、冬の間どこにいたのか多くの小鳥達がサマータイムのボンの空で高らかにさえ ずっています。本当に良い季節です。そして、暖かく素晴らしいこの季節を心待ちにしていたのは植物や昆虫や小鳥だ けでなく、ドイツ人だって待ち望んでいたのです。
ドイツ人のアウトドア好きは結構知られていますが、天気の良い土日の公園には本当に多くの人が訪れています。 街中の人が公園に集合しているのかぐらい多くの人がいるのでなるほどそれは真実とうなずくわけです。ランニング、 凧上げ、サッカー、バレーボール、フリスビー、サイクリングやローラーブレード、ベビーカーを押す親子連れ、仲良 く腕を組んで歩く老夫婦、芝生に寝転ぶ若いカップル、ベンチでぶ厚い小説を読んでいる青年…柔らかい日差しを浴び ながらのんびりと休日を過ごす人々は穏やかな顔をしています。

さて、日曜日ドイツではショッピングができません。これは法律で日曜日に(レストラン以外の)店を開けてはいけない 事になっている為ですが、そうなると当然市街や商店街は人気も少なく日曜日に街を訪れた人は半強制的に淋しげな通 りでウィンドーショッピングをせざるを得なくなります。旅行で街を訪れるのであればそれもまた面白いでしょうが、 毎週毎週そればかりではやはりつまらないでしょう。その点公園という憩いの場所は休日を自由に利用するに打って付 けということです。

ところで、日曜日に食品店が開いていないというのは一人暮しにはなかなか辛く、コンビにもありませんし、土曜日食 料を買い忘れるとひもじい思いを強いられてしまうのがドイツです。
今年は4月9日から12日までイースター(復活祭)のお休みです。イースターを過ぎるといよいよ本格的な春の到来と 言われています。のんびりと平和にこの4日間の連休を過ごす為、今日はこれからスーパーに乗込もうと思います。 花より団子の春の一時です。

Hallo!!
やっぱり外が良いね!!

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電車に乗って思うこと          2004年5月

欧米人の方が日本人に比べて対人距離が近いというのはよく聞く話です。日本では握手をしながら挨拶するよりお互い に距離をとって深々と頭を下げる方が日常的ですし、友人と頬と頬を合わせてキスを交わす習慣などほとんどありませ んから確かにそうなんだと思います。ところが最近、場合によっては日本人の対人距離の方が近い事があると思うこと がありました。

その日は花火大会で多くの人がライン川沿いの会場に押し寄せました。公共機関は超満員、とはいえ日本の通勤電車を 知る人からすれば普通かもしれません。しかし満員電車に乗り慣れていないドイツ人にすれば非常事態。その上 いたる所に席が空いていたりまだ乗れるスペースがあったりして全く要領の悪い車内状況。入り口で詰まっているせい で乗れない人も大勢いました。「空いている席に座りなよ!」と促された人も知らん顔。何故そこまで頑なに空きスペ ースを作りたがるのか非常に不思議でした。
その時、あきらめてホームを去る人達の後ろ姿を見ながら先日テレビでやっていた『タイタニック』を思い出していま した。沈没寸前にまだ空きのある救命ボートが次々と降ろされていく様子です。「非常時にまでパーソナルスペースを 重視するなんて!」と思うシーンでした。状況がかなり違うのでなんともいえませんが、欧米人独特の対人感覚がもし かしたらタイタニックの悲劇を生んだのだろうかとそんなことを思いつつ、久しぶりのギュウギュウ詰に揺られました。

そういえば救命ボートのスペースを女子供のために作る時、各国の男性に降りてもらうためのお願いの仕方という冗談 があります。アメリカ人には「あなたはヒーローになれますよ」と言い、イギリス人には「紳士的行動を」と、ドイツ 人には「そういう規則ですから」とお願いし、日本人には「皆そうしていますので」と頼むのだそうです・・・余談でした。

さて、満員電車で必要なのは譲り合う心でしょうか。それとも隣人を物と捉える鉄の感情でしょうか。いずれにしても 日本人は電車に乗るのが上手です。

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方言          2004年6月

ドイツ語と一言に言っても日本と同様に方言というものが存在し地域ごとに言葉のイントネーションや発音、 使い回しが異なります。歴としたドイツ人でさえバイエルン地方(南ドイツ)で話されるバイリッシュは強い方 言で分からないといいます。そういっている本人もラインランド訛(ボン周辺の方言)が強かったりしているの で標準ドイツ語を学んできた日本人には分からないことがあるのは当然です。よく言われるのが標準ドイツ語 を話す人はドイツの中でアナウンサーと外国人だけだということ。何をもって標準とするかはなかなか難しい ところですが、各地の親切なドイツ人の皆さんは標準語と信じてすばらしく訛った ドイツ語で話しかけてくれることがあり、目尻のしわが1週間つきっぱなしになるほどの笑顔(日本人の最後の武器) のまま固まってしまうことがしばしばです。
とは言うものの方言は耳に心地の良い独特のイントネーションや発音があり、それは飾らない極日常使われる 言葉ならではだと思います。どこかの地域に旅をして行き、そこの地域の人が方言で話すのを聞くといよいよ 他の文化圏に入ったのだなあと実感するものです。これは日本においても同じですよね。

北ドイツでは「こんにちは(Guten Tag=グーテンターク)」を「Moin=モイン」といいます。 南ドイツでは「Grus Gott=グリュースゴット」、スイス(チューリッヒ)では「Gruezi=グリュッツィ」と 挨拶します。それぞれの場所で素敵な笑顔に出会えたらぜひ地域の言葉で挨拶し返してみたいものです。

Gruezi!!
スイスの農家で一緒に食事を

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サッカー          2004年7月

先日ポルトガルで開催されたヨーロッパサッカー選手権大会ではギリシャが未曾有の優勝を果たしました。 後日の新聞では各誌がこぞって選手の喜びの表情を捉えた写真を大々的に掲げました。オリンピックの追い 風を受けたのか世界に名立たる強豪を押しのけての優勝、誰もが想像しなかった結果にヨーロッパ中が驚き祝福しました。  
この選手権大会の開催期間中、試合が始まる時間になると商店街から人気がなくなる現象が起こりました。 それは急いで家に帰りテレビをつける人がいたり、またはビール片手にレストランの特設テレビに 食いついている人が多かったためです。
ヨーロッパのサッカー好きは相当なものです。日本でも無論サッカーは人気のスポーツですが野球にもなかなか 根強い人気があります。これに対しヨーロッパでは野球の人気が驚くほど低い現実があります。 野球のルールを知らない人もいますし、スポーツ店に行ってもバットやグローブが見当たらないのです。 キャッチボールを目にする機会は少なく、公園や広場は専らドリブルでかけ抜ける少年たちが眩しい汗を流す場所 となっています。
盛夏、自分で体を動かすのも良いですが、たくさんの人がひとつのスポーツを一生懸命観戦するあの一体感にはなんとも言えない 感動があります。そしてそれを創り出してくれる選手には惜しみない拍手が送られます。

EUに新しい10カ国が加盟してますます勢い付くヨーロッパ。サッカーの平和で誇らしい一体感が荒んだ世界の情勢 に一時の爽やかな風を吹かせてくれたような気がします。

レゴのサッカー場
サッカー競技場(レゴ)

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お墓          2004年8月

お墓参りに行くと、日本とヨーロッパで墓地の雰囲気が違うことは一目瞭然です。ヨーロッパの緑に覆われた墓地の 真ん中に立つと、広々とした自然豊富な敷地と高木から漏れる柔らかい日差しのせいでまるで公園の中にいるような 気持ちになります。それでいてやはりどこか物静かな雰囲気があるのはやはりそこに死者が眠っているためでしょう。
日本の霊場には、重々しい色の墓石と殺風景な玉砂利の敷石が広がっているのが定番です。線香の紫色の煙と匂いが 立ち込めていて、そこに足を踏み込めばたちまち厳かな気持ちになり「あ、お墓のそばにいるんだ」と容易に認知できます。 整然とした様子が余計に寂しく「死」というものを真っ直ぐに見せつけているようです。

明るく公園の様なドイツの墓地にもお墓ならではの植物が植えられ、そこに来た人に荘厳な印象を与えています。 ドイツにも霊場をイメージする植物があり、暗い針葉樹が投げかける優しい木漏れ日の下に白い墓標が据えられている姿は ひっそりと寂しいのですが、それでもお墓の周りはたくさんの草花が植えられ、美しく飾られています。熱心にお墓参りされる 場所はいつでも優しい花々が包んでいます。

死者を敬う心は何処の国も同じはずです。しかし文化の背景が違うと墓地の雰囲気ががらっと変わってしまうのですね。 お盆にはご先祖が家に帰ってらっしゃるといいます。勿論ドイツにお盆はないのでこぞってこの時期お墓参りしませんが、 いつもでも華々しく飾られたお墓にならご先祖も気持ちよくいつでも帰ってこられそうです。

ドイツのお墓
穏やかな光の中で
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芸術の秋          2004年9月

秋分を過ぎたドイツにはいよいよ木の葉も散り薄暗い空が迫る秋が来ます。今年は夏が来るのが遅く待ち焦がれた季節は足早に通り過ぎていきました。今は1日のお勤めを終えた太陽が西に首をかしげながら、渋滞するアウトバーンにて眠そうにあくびをする仕事帰りの運転手の顔を心配そうに覗き込んでいます。 山の少ないドイツでは地平ぎりぎりの森に沈み消えゆくまで真っ赤な夕日と睨めっこができます。目線の高さの太陽は、イメージとしては見上げるならず見下げるようでもあります。しかしながらその眩しいこと。短い夏の間は胸元にぶらさがりっ放しだったサングラスの出番がついに来たみたいです。
10月にはサマータイムも終わりさらに日没が早く感じられるようになります。アウトドア派でサンシャインをこよなく愛するドイツ人の楽しい季節を思い出しているのか、太陽が低くいつまでも地面で止まって見えるのはそんな夏を名残り惜しむ気持ちのせいでもあるのでしょうか―。ちょっとおセンチでした。

さて、外が寒くなり暗くなるっていうのなら室内で楽しもうという考えがあったかどうかは分かりませんが、9月からいよいよオーケストラ、オペラなどのシーズンが始まりました。日本でもドイツのオーケストラは有名ですよね。
先日ケルンフィルハーモニーを聞きに行く機会がありました。爽やかな秋風が気持ちの良い夜でした。クラシック音楽に無知な私でも一流の演奏家たちが奏でる音は素人耳にも何か感じるものがありました。それは波のようであり色彩のようでもありました。演奏を終わったあとの数秒間の余韻と静寂の美学とも言える気がします。単純にその雰囲気に酔っていただけかもしれませんが。

芸術の秋とは夏の余韻に浸りながら来る寒く暗い秋の夕べを有意義に生活するための術と悟ったつもりの雅な夜でした。

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夕暮れ時に          2004年10月

小さな路地裏のアカシデが精一杯幹を揺すってその種を秋風に乗せると、辺りはまるで金色の雪でも降ったようになります。三叉のような形の船に乗せられてアカシデの種は遠くへ遠くへと旅立って行きました。石畳の小道の脇に路駐されたフォルクスワーゲンは対照的に、ずっと昔からそこにあった自然物のように落ち葉に埋もれてしまっています。短い秋の黄昏の瞬間、 長い冬へと続く西の空一杯の夕焼けを見ながら通り抜ける並木道で、物思いにふけるには十分な時間と空間が手に入りました。

古い町並みを残すドイツの情景は現在もそこに生きる人が意図して風景を作ることで保存され続けています。それは暮らしの中の利得だけに囚われず、時として熱心に無駄を消費したり、時間を費やしたりすることで成り立っているものです。 例えば石畳の道路は車には走りにくく老人には歩きづらいものなのに依然残っています。石畳は聖堂や教会との相性抜群で、情緒ある風景には必然です。石造りの家は保存し易いこともあるのでしょうが、築云百年にもなる古家は内装こそモダンに変えても外装はかつての風貌を保ち続けています。周りの民家との色彩バランスを考慮しているので、決して突飛な色の壁を 持った家は生まれてきません。もし庭の手入れが行き届かないとその家はなんとなく浮いて見えます。窓辺の花が楽しく道行く人を見下ろしたり、街路樹の下の古びたベンチが、常連の老人がやって来て座るのを待っている風景。 個人の自由が重視される社会においてコミュニティーを非常に意識しているのがヨーロッパです。誰の為でもない歴史を意識して生きているように思います。風景を未来へ繋いでいくのは日常生活なのだと誰もが知っているようです。

区画整備と道路・河川改修工事で便利さと引き換えにすっかり変わってしまった日本の田舎の風景を思い出し、積もった枯葉の下に埋もれて見えなくなったのは情緒とゆとりなのだという気がして寂しくなりました。

町並み
石畳と町並みのバランスが良いです
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高速道路          2004年11月

スピードメーターが160km/hを指しても追い越し車線に入るのを躊躇するドイツのアウトバーンですが、全ての区間で速度無制限というわけではありません。カーブの多いところや道幅の狭まるところでは速度規制がちゃんとなされています。 それに基本的に推奨速度は130km/hですし(この時点ですでにちょっと驚きですが・・・)、皆が一様にF1のハンドリングを体験したがるわけではありません。むしろ、ガソリン代が高くなることを考えると自然と130km/hぐらいに納まるのです。 これが国境を越えてオランダやスイスやデンマークに入ると全面速度規制があり、ドイツ車がウンウンとブレーキをかけながらイライラと制限速度10km/hオーバーぐらいで走っています。道は繋がっているのに性質だけが変わってしまうのが国境です。

先日オランダの高速道路を走っていて赤信号につかまりました。高速道路に信号機があるというのは不思議でした。目を白黒させて急ブレーキをかけ、渋滞の真ん中付近からいったい何の信号だろうと思って見ていると、前方の道路が 見る見る立ち上がって真っ二つに分かれてしまいました。なるほど、これは実は運河の上で、帆船が通るときに高速道路を分断せざるを得ないのです。日本でならきっと橋をもっと高く造るか運河を掘り下げるのでしょうが (あるいは帆船の航行を禁止する)、オランダ人はゴッホの絵にある通りの稼動する橋を準備していました。
同じくオランダの高速道路にて・・・
順調だった車の流れが突然渋滞になり、これまた急ブレーキで心臓がバクバクいう事があったのですが、何事かと見ていると2人の男が一生懸命ガチョウを追い回していました。逃げ出したのか落としたのか知りませんが、 変わったトリモノを見ました。

所変われば高速道路も変わるものだ、最近は高速道路の一般常識が変わりつつあるようです。

ドイツの道
注意!車は右側通行です。!

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肉文化          2004年12月

高級和牛はご存知の通り筋肉に十分な脂肪が入り込んで”さし”の状態になることが良しとされます。だから高級和牛の肉の色は桃色がかり、熱い鉄板の上に横たえれば滴るほどの旨い脂が弾けることになります。 ところがヨーロッパでは脂肪が多い牛肉が嫌われ、むしろ赤身の多い日本なら評価の低くなるものが重宝されます。神戸、松坂に代表される和牛は高くて美味しいとヨーロッパで誰もがため息混じりにささやき合い、 「牛をマッサージするんだろう!?」「ビールを飲ませるんだって!?」と手間隙のかかる育成によってこの上なく高級な肉牛が誕生する様を驚嘆と好奇心とをにじませながら語らっているくせに、肉食文化の本元 ヨーロッパには何故か日本のような超高級肉志向がありません。
考えられる一因は食文化ではないでしょうか。
和牛のしゃぶしゃぶはほっぺがとろける程旨いものですが、それもこれも十分な脂肪が滑らかに舌の上で溶けていくからでしょう。さっぱりポン酢におろし大根(もう長いこと食べていませんが)がとてもマッチして最高ですね。 しかしヨーロッパの多くの牛肉料理には赤身の肉の方が良いようです。
もともと味付けが濃くまったりとした料理には脂の多い肉はくどくなります。ヨーロッパの料理もその雰囲気が強いのでおのずと求められるのは低脂肪で噛み応えのある肉という事になります。
「健康の為にも肉にはあんまり脂肪が入っていないほうが良いのよ!」とあるドイツ人の主婦はそういいながらバター半ブロック(約100g)を鍋に放り込んでいました。これは食文化というより認識の差かと思いますが…。

最近オランダで和牛のブリーディングが行われているらしい事を聞きました。ちゃんと和牛種を育て、マッサージして美味しい餌を与えているようですが、ビールは与えていないそうです。ハイネッケンを飲んでいる牛を想像しながら今日はポトフに挑戦です。

子牛と一緒に
そんな顔で僕を見ないで。

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ベルリン食の見本市          2005年1月

1月下旬、世界最大といわれる食の見本市“緑の週間”(Grune Woche)がドイツのベルリンで開催されていました。この見本市には世界各国の食品企業、農業関連企業、 団体、機関などがブースを出しており、毎回約12万人の入場者があるといいます。オリエンタルな香り漂う中近東のブースを通り過ぎ、魚の燻製が釣り下がるロシアの ブースを脇に見ながら、右に左に興味深いたくさんの展示を追いかけていくとどんなに急いで見学しても半日では回りきれません。それほど巨大な会場中ギュウギュウに 客が押し寄せているのだから、この見本市の注目度の高さを知らしめられます。
見本市はヨーロッパ各地でよく開催されますが、中でも農業の展示は大々的で、ヨーロッパの人の農業に寄せる思いの強さを感じないわけにはいきません。 それに一般の人にとって日常生活で触れる機会の少ない大動物や農業機械は興味深いに違いありませんし、食糧や生産物との関わり合いは普段意識しないだけで、 実はいつまでも付きまとう永遠のテーマですから人々の眼差しが注がれるのは当然のことなのかもしれません。
そんな様子を見ていて思うのは、日本で国際的な農業メッセが開かれたらどうなるのだろうという想像です。

大規模農業をするには土地が少なく、かといって他国に比べて農家人口が少ないわけではない(むしろ多い)日本の農業の現状を世界に紹介してみたとき、 世界の中で日本の農業はどのように映るのでしょうか。電子工業、科学技術で世界に名立たる日本なのだから農業なんか近隣諸国に任せれば良いのだという意見が聞こえてきそうです。 あるいはより効率的な農業を目指して小作を集約、大規模化していけば良いのだと主張されるのでしょうか。そしてそれで良いのでしょうか。
人間にはお金が必要ですが、突き詰めていけば食物の方が重要です。そしてそれを作ることができるのは農業以外に無く、農業という手綱を放してしまったとき、暴走した食文化はきっと私たちを地面に叩きつけてしまう事になるのではないでしょうか。 食べることに困らない国だからこそしっかりとした認識を持たなくては、そのうち自分が何を食べているのか分からなくなってしまいます。

緑の週間の会場を今一度見回して見ました。「ほら!ヒヨコだよ」と親子が覗き込む箱の中から、数日前に生まれたヒヨコという生命がつい数年前に生まれた男の手のひらの上に乗せられ小さくうずくまると、みんなで可愛いと大はしゃぎ。そしてその黄色い可愛らしいモノが数ヵ月後 にもしかしたら抱えている男の子のお腹に入るかもしれないことを農業だけはちゃんと教えてくれます。
“緑の週間”に参加しそこを訪れる人の表情を見ながら、農業が与えてくれる潜在的な倫理性や教育的性質を感じずにいられませんでした。

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甘党          2005年2月

緑茶に砂糖を入れて飲んだことがありますか?そんな馬鹿なことがあるかと思われるかもしれません。しかし、それはドイツにおいては冗談ではなくスタンダートな飲み方なのです。 コーヒーに砂糖を、紅茶にも砂糖を、だから当然緑茶にだって砂糖を入れるのです。何の疑いも無く緑茶のそばに添えられるシュガースティック。危うく私も砂糖を入れてしまうところでした。
とはいってもドイツのグリーンティと日本茶との味の差は歴然としていて、なんとなく砂糖を入れても良いような風味。渋みが弱いので甘さとけんかしないのでしょうが、 なんとなく抵抗があるのは私が日本人だからでしょう。ペットボトルや紙パックのグリーンティには例外なくたっぷり甘味料が添加されています。何を飲んでも甘いというのは、 ある意味で選択権が無いような気もします。幸い水には砂糖は入っていませんが…あ、ドイツ語で淡水のことをズースヴァッサー(甘い水)と言います。ドイツ人にとって飲める物は甘くあるべきものなのでしょうか。
ある日、ポットの底に砂糖の結晶が沈んでいるアイスティーを勧められたことがあります。コップ一杯のアイスティーで2日分の糖分を摂った気分でした。その時食べたタルトも甘くて、私は体内で砂糖が再結晶していくのを感じました。 そういえばドイツの映画館のポップコーンも普通は甘いです。美味しいのですが、塩辛い味を求めて購入したポップコーンが甘かった時の虚しさは、緑茶に砂糖が入っている事を知らずに飲んだ時とよく似た切なさをかもし出します。 そして目の前の席で熱々甘いカップルが仲良く肩をくっ付け合って映画を見ていれば、あー、ドイツ人というのは本当に甘いものが好きなんだなあと妙に納得してしまう、そんな私も徐々にドイツ人級の甘党になりつつあります。
朱に交われば“甘く”なるものです。

美味しいケーキと優しい農場主
甘いもの大好きです!

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自由な食事          2005年3月

バイキングとかビュッフェと呼ばれる食事形式がありますね。焼肉やケーキなどの“取り放題”や“食べ放題” というとまずこの方法です。自由で気楽なこの食事方法、日本人と欧州人の間に認識の差を感じます。

ヨーロッパのホテルではよく朝食や夕食がビュッフェの場合があります。たくさんの料理に目移りしてしまう楽しい 食事ですが、この食事をし終わった後のお皿の上に日本人と欧州人の差が見られるのです。それは日本人の食べ残し 。手つかずの料理が山盛りになった器の中を見て、先進国のエゴイズムだと言ってしまって良いのでしょうか?そん なはずはありません。なぜなら多くのドイツ人は食べ残しをしないからです。だからといって日本人が食べ物を粗末にし食文化が廃れてきているということを言いたいのではありません。ここでは双方の意識の差異を取り上げてみたいと思います。

日本人がビュッフェを、『自分で食べてみたい物を好きなだけとって来る自由な食事』と認識しているのに対し、ド イツ人は、『自分が食べられる物を好きなように取って来る自由な食事』と考えています。

まず日本人は、 自由に取って来られるという事を自分の要求が満たされる事と考えていると言えるでしょう。それは自分の判断で何でも 取ってみる事に価値があると言わんばかりです。だから取って来てはみたものの食べきれないという事が起こります 。
ではドイツ人はどうかというと、自分の好きなものしか取りません。だから食べ残しもありません。ドイツ人に とっての自由とは、自分に必要な物だけを取って来るという事が言えます。それは絶対的でどんな場合でも日常の食べ 方を優先させているということです。
例えば、日本人は色々な種類の食べ物に興味を持ちますが、ドイツ人は自分の味覚に慣れた物を好みます。だからビュ ッフェでは、ソースやケチャップやマヨネーズ味の料理を好んで取ります。 端的な捉え方かもしれませんが、日本人の食べ残しに目を丸くするドイツ人と、ご飯やスパゲティーやフライドポテトな ど何にでもケチャップをかけるドイツ人の味覚にげんなりする日本人がお互いの感覚で“自由”という言葉を用いた場合 、もしかしたら共通のイメージでは無いのかも知れません。
いずれにしても、自由な食事には自己責任が伴うこと を認知する必要があります。マナーある食事をしましょう。

テーブルサービス
正しい食器の並べ方

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抱負          2005年4月

春嵐が雷管を鳴らした瞬間に地中でクラウチングしていた植物たちが一斉に発芽する春。我先に天を目指す小さな 息吹が限りない生命力を吹き上げ、細胞分裂の音が聞こえてきそうな程です。小春日和、土を掘り返すと無数の蟲が 土をこね回し、食べ、命を燃やしているのが見られます。春は地球が繰り返し命のスタートラインを引く節目の季節 なのだと思います。

私はこの春で入社し2年経ちました。まだ未熟なくせにドイツ生活も1年半経過して慣れと怠慢が日常に蓄積され始め ている気がします。特別な環境も毎日続くと日常になるのは人間が適応能力を持っているからでしょうが、今自分が 置かれる環境の中で人生の種がちゃんと生長するよう毎日を大切にする努力をしていこうと思うこの頃です。それは つまり初心に返ること。好奇心と感動する心、絶え間ない挑戦とやる気、これが初心だと思います。この春1年間の欧 州研修をスタートした研修生達に負けないくらい1年を大事に過したいです。
例えるなら研修生は日本産の種。ヨーロッパの土の中に埋められた勇敢な種子たちは今この春発芽して、地中深く根 を広げようと一生懸命です。
植物を見て地上の可視できる部分を花とか野菜とか果樹と呼びますが、本当は植物体の大部分は地中にあります。ド イツのとある有機農家で野菜のデモンストレーションとして展示されているサラダ菜を見て驚きました。ガラス板で 土を挟み様子を見られるようにしている物で、その根の深さは裕に1mを越えていました。樹木ともなると根の深さは 30mになるともいいます。
見えない部分で生長する根。春の光の中、日の当たらない部分を成長させるのが海外農業研修であると確信していま す。研修生という苗が台風にも大雨にも大干ばつにも耐えうる強い根を張れるようサポートして行きたいと思ってい ます。

壮行会より
You can do it!

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卵1          2005年5月

海外旅行から帰って来て最初に食べたくなるものは何でしょう?きっと豪華なものよりお茶漬けや梅干、たくあん、 卵がけご飯などが食べたくなるのではないでしょうか。しばらく日本を離れると懐かしの味を恋しく思うものです。 まあ、今の時代日本食材は高いのを覚悟すればどこででも手に入りますが、畳に座りつつがなく箸を口元に運ぶ動作 があってこそ日本食は格別です。
私は卵がけご飯が大好きです。しかし現在は色々な理由で自粛しています。一つ目の理由はサルモネラ菌。ドイツの 卵にはサルモネラがいるというわけではないのですが、いないとも言い切れないのです。

90年代後半にドイツではサルモネラによる死者が相次ぎ、その一因が鶏卵でした。そこで現在は250羽以上の養鶏をする 場合サルモネラの予防接種が義務付けられていますが、それで100%無くなるというわけではありません。くじ引きのよ うな状況になかなか勇気が出ないので大好きな卵掛けご飯を我慢しているという訳です。
59℃以上の熱で死滅してしまう菌なので料理をすれば大丈夫なのですが、生卵の食感、濃厚な味わい、ご飯とのハーモ ニー(ああ、よだれが…)、ドイツ人からすれば生の卵を食べられなくとも問題ないかもしれないけれど、日本人とし てはやっぱり残念です。ただ自家製マヨネーズを作っている人達もいますので、そのような人達は業者が卵の抜き取り 検査をしてサルモネラフリーを認証しているサルモネラ菌のいない卵を買ってきているようです。しかしやっぱり一般 的に生で卵を食べる文化がない国でサルモネラ検査は重要視されていないのでしょうか、サルモネラフリー卵はあまり 市場に出回っていません。

確かに検査というのは手間がかかります。しかしそれをしているかどうかで安全への信用は大きく違ってきます。もち ろん検査をしているからといって完全にその結果を信用して良いのかというと疑問ですが。 さて私が卵掛けご飯をしないもう一つの理由は、日本が恋しくなりホームシックになってしまうからです(なんちゃっ て)。

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卵2          2005年6月

前回卵について書きましたが、再び卵の話を書きたいと思います。

2004年1月からヨーロッパでは採卵鶏農家登録制度が開始されました。これは何かと申しますと、出荷された卵一つひとつに 12桁 の番号と記号の認識コードがスタンプされ、そのコードを見れば何処の国の、何処の地域の、どの農家が、どの鶏舎で生産した卵 か知る事ができるというものです。EU規定基準に沿うものなので、初期EU15カ国のコードが準備されています。さらにその卵がどの ような環境で生産されたのかまで消費者が確認できるのです。それでは順を追って認識コードを説明していきます。
例えば、“1-DE-0512341”というコードの打ち込まれた卵があるとします。最初の数字は生産環境を示します。0が有機飼育、 1が野外飼育、2が平飼、3がケージ飼となっていますので例では野外飼育と分かります。ついでハイフンに挟まれたアルファベット 2文字は生産国を意味し、DEとはドイツです。オランダならNL、ベルギーならBE、イタリアならIEとなります。続く7桁の数字の内、 前半6桁がいわゆる農家番号で各農場の登録番号を示します。さらに最初の2桁は州を示し、△-DE-05△△△△△ならばドイツの ノルドラインヴェストファーレン州という事になります。最後の1桁が鶏舎番号を意味します。複数の鶏舎を有するならば棟の数、 複数の飼育形態がある場合はそれぞれを1つと数えます。例えば一つの鶏舎が壁で区切られ野外飼育と平飼の両方の飼育形態を 有する農場なら前者を1、後者を2とします。それが更に多くなれば数字は3、4…と大きくなります。

この識別コードが打っていない卵がスーパーや肉屋など小売店に置かれることはなく、もしあったらその卵は未登録の出先不明卵 という事になります。逆に、直売や自宅消費、宅配や手渡しで卵が直接消費者の手元に渡る時は当然出先がはっきりしているわけですから コードが不要になります。
食べ物より車や家にお金をつぎ込む、ちょっと食に対して疎い観のあるドイツですが、発効後1年が経過したシステムも少しずつ 定着してきているのかなあと思います。

今回は説明ばかりになってしまいましたが、自分自身お店で手に取る卵が何処から来たのか、どうやって生産されたのかはっきり わかる事に感動を覚え、あえて紹介させて頂きました。
以下にドイツの鶏卵検査管理をしている団体のページを紹介しておきます。

  • KAT
  • Gutegemeinschaft Eier GmbH

    肉屋
    肉屋で卵を売っていることがあります
    (ここにはありませんが)


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    環境保護          2005年7月

    買い物した時にもらうビニール袋って処理に困りますね。ある程度は取っておいてゴミ袋や小物を入れるのに使えますが、 そのうち部屋の隅の一角にビニール袋入れ袋など作られ、やがて2、3袋に増え、仕舞には捨てる事になりがちです。 その他にも商品のビニール包みやら野菜の包装やら何かと包んでいる物が後に残す"一過性の価値"がいわゆるゴミとなり 地球の将来を不安なものにしていきます。

    ヨーロッパに来て買い物をする時まず感心するのは、誰もが布製買物袋を持っている事です。ポケットやバッグからさっと 取り出される布袋はそのシミやほころびから何度も使い回されているのがうかがい知れます。そんなちょっとばっちい袋の中へ 裸のままの丸パンをぽんと放り込む主婦を見て不衛生ではと思う私もまだまだ日本人です。
    とは言いながら自分もこの袋を使用しており、意外と頑丈で2年経ってもまだ使え、買い物以外にも何かと重宝する便利で 経済的な道具であることは実証済みです。これがあればビニール袋を準備してもらう必要はありません。
    「あーなんて環境にやさしいんだ」と感心していると、「だってビニール袋買うのも出費じゃない」という声。 日本と違いほとんどのお店で買物袋は有料で、いちいちそんな物にお金を掛けるのは馬鹿馬鹿しいという意見です・・・確かに。

    一般に環境に配慮している、環境保護の進んだドイツという言葉を日本ではよく聞きました。しかし、行いが結果として 環境保護になっているケースもあるのではないかと思うこの頃です。例えば布製買物袋にしても、空ビンのデポジットや 有機栽培に対する特別支払にしても、環境保護という大儀と共に利益の還元が高い価値を示しています。逆にそれが無ければ 誰もしないでしょう。自分に直接的な被害が無い場合、人間というのは結構無頓着になれるものです。雨漏りする家に住む人 としない家に住む人で、どちらの軒下にテルテル坊主が下がっているかははっきりしています。

    ドイツは環境保護の進んだ国―。

    車を運転中、前の車が窓から捨てたファーストフードの紙ごみを黙視しながら、 国が位置付ける環境保護より個人が心がける慈愛溢れる環境保護がいかに尊いかと思いました。

    natur
    いつまでも美しい世界を…
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    異常気象          2005年8月

    8月下旬、日本はまだまだ暑い日が続きますよね。ドイツはすでに秋の到来を感じさせます。

    ドイツの家はぶ厚いレンガやコンクリートで造られており熱伝導が遅いので、外がどんなに暑かろうと室内はヒンヤリ涼しいのが特徴です。 ところが今から2年前の夏、ヨーロッパが異常な高温に包まれた時には、この構造の性質が裏目に出てしまいました。つまり、 昼間の太陽熱がじわじわと石に伝わり家の中が高温に保たれてしまったのです。本来そこまで暑くならないヨーロッパには クーラーの無い家も多く、熱中症にかかって亡くなる方も多かったのです。
    近年は環境変化のせいなのか天変地異の前触れなのか、気温や降雨雪や台風、潮流、地震に至りまとめて「異常気象」だと騒がれ、 もはや「平常気象」の方が異例です。病気だと思い込むと何となく具合が悪くなるのと同じで、異常気象だと聞くと何もかも 狂って見えるのはなぜでしょう。それとも本当に何かが狂っているのか・・・。

    災難は忘れた頃にやってくるもので、思いもしない時に問題は発生します。先日スイスへの出張中に突然左目が痛くなり、 鏡を見たところ真っ赤に充血していました。その日ドイツまで600km車で走らなくてはいけなかったので慌てて大学病院へ出かけ 診察してもらいました。幸い処方された目薬で良くなり事無きを得ました。確かに診察しないで走っても問題なかったかもしれ ませんが、途中でひどくならないとも限らないし、「もしかして」と思い億劫でも病院へ行って良かったのだと思いました。

    第六感というのが働いて危険を回避するというのはよく聞く話ですし、安全だと思い込んで不意打ちを喰らうよりは身構えていた 方が的確に状況を把握して解決できるものでしょう。
    最近異常気象だと誰もが言うのは、もしかしたら本当にやってくる「何か」に対し第六感が働いているのでは?そういえば 今日突然「電話代未払警告通知」が届きました。エッ!払ったはずなのに・・・異常だ!
    暑い夏、怪談話は良いのですが、こういう怖い話は勘弁してほしいと思います。

    gletscher
    スイスの氷河

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    黙礼          2005年9月

    小説家の小川未明さんが好きです。彼の作品の中に「野ばら」というものがあります。国境警備に当たる老兵と青年兵士の友情の話です。 読んで頂けば分かるのですが、黙礼が印象的に描かれています。最後に若い兵士が老兵に黙礼して野ばらの匂いを嗅ぐそのシーンが とても好きです。何度も読み返しこの黙礼が意味する感情は何だろうと想像し情景に包まれていく心の中で、相手を敬い、 感謝する時、自然と黙礼している自分に気が付きました。

    日本人は微妙な心の表情を捉えて最大限に理解する能力を持っていると思います。長年連れ添った夫婦が 「あれ」「それ」「あ」「うん」で会話できてしまうのはその特殊能力のせいでしょう。口にしなくても相手のことが分かるなんて テレパシーみたいだけど、実際にやってのける名人たちが日本にはたくさんいます。しかしヨーロッパではそうは行きません。 口に出したことが表現であり、表情が感情であり、具体的な要素だけが意味を持ちます。例えば、日本語には 「ちゃんとやりなさい」「頑張りなさい」「よろしくお願いします」など、言動+状況によって幾通りにも意味が変化する曖昧な 言葉がたくさんあります。これをヨーロッパ言語に直訳すると大変です。相手から質問、尋問、仕舞いにはクレームまで付けられて しまう事があるのだから。
    「研修生を厳しく指導して下さいね」という言葉をドイツ語に直訳して話したら、「研修生は何も悪くないのに何故だ?一体私の 指導の何が悪い?」といわれました。社交辞令といわれる言葉の多くはヨーロッパ人を困惑させます。多義のある言葉を用いる時は 自分が何を言いたいのかはっきりさせて話さなくてはいけません。「厳しく指導して下さい」とはつまり、 「今後も研修生の指導をよろしくお願いします」という感謝と敬意(激励と尊敬)を含む意味があるわけで、結局 「あなたの研修事業へのご協力とご苦労に感謝します」と言えば混乱を招かない事に気が付きます。こんなふうに、文化の食い違い を乗り超える為に説明を要するケースがよくあります。

    横断歩道で止まってくれた車に黙礼。横を歩くドイツ人の友人が目を丸くして、「え、今の知り合い?」

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    レストランにおける徒然なる分析的散文          2005年10月

    ドイツのレストランではお冷が出てない。だから席に着いたら何か飲み物を注文するのが一般的。適当なところへ腰掛ける とウェイトレスがやって来た。ちょっと前まではドイツのウェイトレスは随分無愛想だったが今日のお姉さんは笑顔 (機嫌が良い)。この数年でドイツ人もなかなか社交的になったように見えるが、恐らく自分がドイツ人贔屓になっただけだろう。 今日は清涼飲料も果汁も飲みたくないのでとりあえず水を注文する。(直後ビールを頼まなかった事を少し後悔する)
    水―。真水、雨水、水道水、井戸水、湧水、ミネラルウォーター。数ある中でも日本人が飲める水となるとかなり限られている。 途上国の生水は衛生面から、ヨーロッパの水は硬水でミネラルが多すぎるから駄目だと言う人がいる。日本人が考える飲用水 とは狭義の水をイメージしている。ところで今運ばれてきた水は炭酸水だ。ドイツでは普通、水といったら炭酸入りになる。 これでまた日本人が飲めない…改め飲みづらい水が仲間入りした。ちなみにこのシュワッとする水、慣れると逆に無性に飲みたくなるものだ。
    さて、そろそろメニューに目を通そう―。
    「それじゃあ、食事はスパゲッティー・アラビアータをもらおうか・・・」水を持ってきたウェイトレスに注文する。
    ちなみに給仕人はテーブルごと決まっており、他の人を呼んでも来てくれない。(ウェイターがなかなか来てくれない時 ちょっと寂しい)
    アラビアータはペペローニ入りトマトソースだ。文字通りアラビアンな感じで辛い。ちなみにドイツ人には比較的辛い物が 苦手な人が多いことをここに書添えておこう。更にいうと猫舌も多いように思える。それにしても衝撃的なのはスパゲッティー が伸び切ってしまっているケースが多い事だ。これはもはや文化としか言いようがない。彼らは給食のソフト麺状になった スパゲッティーを非常に好む。ご多分に漏れずその様な一品がテーブルに置かれた。ドイツ料理がまずいと言うジンクス (本当は美味しい!)はこういう点から生まれるのだろうか。しかしこれはこれで美味しいと思うところが食に柔軟な日本人 だと自分に強く言い聞かせる。
    支払はウェイトレスがテーブルまでやってきて精算する。なかなか気の利く良い感じの人だったのでチップが弾んだ。 (本当は計算を間違えて多く払っただけ…、外国語で計算するのは非常に難儀である)(2005年某月某日)

    ペペローニ
    まずくは無いが・・・


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    話法能力          2005年11月

    ディスカッションでは話法と勢いを要します。日本人はディスカッション能力が足りないとしばしば言われますが、西欧社会 にいると日本のディベート訓練は不足気味と実感します。話をする訓練を積んでいないと支離滅裂で相手に自分の意思が伝わ らなかったり、簡単に言い包められてしまったりします。
    ビール瓶を片手に社会や祖国を語る東欧研修生と日本人研修生の背中を見ながら、思わず「頑張れ!」と言いたくなる瞬間。 どちらもたいして語学力は違わないのに何故か会話速度が違うのです。つまり話し慣れているということです。自分の意見を 主張する事が良しとされる社会で生きる者達と、「和」を意識し協調性を重んじる民族との差なのかもしれません。
    天然の国境(海)に囲まれた日本では歴然と国が分かたれていたのに対し、ヨーロッパは国と国がせめぎ合って自己を主張 してきた歴史があります。その性質がコミュニケーションに直接現れているように思います。
    ドイツ人が日頃からよく話し合う様子を見かけます。何を長々そんなに話し合っているのだろうといぶかしく眺めている老人 の会話内容は庭木の植え替えをするのしないのだったり、いつ尽きるとも知れない激しい意見のやり取りの末引越しが決まる などありとあらゆる討論がひしめいています。話題は何でもよく、いったいどうやってそんなに話し続けられるのかと不思議 になるマシンガントークは石弓のような単発の発言で止められる代物ではありません。
    そして、彼らの会話内容がそれほど理解できなくても結論だけがはっきり分かるのも、順序立った意見の衝突から生まれる 整合性の賜物なのかと思います。
    道具は使い込んでこそその機能が発揮されていくものです。言葉という道具を上手く使う練習も必要だといえます。


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    民間療法          2005年12月

    寒い冬、インフルエンザが猛威を振るわない事を祈るばかりです。 さて、風邪をひいた時に何を食べたら良いでしょうか。日本人なら反射的にお粥と答えるでしょう。或いはすりおろしリンゴでしょうか。
    それ以外の食べ物はなかなか思いつきませんし、そもそも食欲がないのにあれこれ工夫を凝らした料理を要するはずもありません。 昨年風邪をこじらせ下痢が止まらなかったので病院へ行ったのですが、その時ドイツの医者がお米には下痢を抑える効果があると言っていました。 やっぱり米って最高だと一人納得しながら家に帰って早速お粥をこさえて食べました。

    風邪に対する民間療法は何処にでもあるもので、ドイツでは胃腸風邪になるとブレッツェルとコーラを口にするそうです。 ブレッツェルとは8の字の形をした南ドイツの伝統的な固めのパンでドイツ全土に普及しています。独特の風味があって美味しいのですが、 なんと製造過程で苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)を使うというなんとも科学的なパンなのです。ちなみに苛性ソーダはブレッツェルを焼き上げる 段階で化学反応が起こり重曹になるので人体に全く問題はありません。うーむ、ファンタスティック!!

    話がそれましたが、そんなパンを2、3日食べ続けるそうです。それにしても違和感を覚えるのは風邪をひいてコーラを飲むということ。 子供の頃には体に悪いからとコーラはたまにしか飲ませてもらえなかった人も多いはず。それが風邪に効果を発するなんてちょっと驚きですね。 きっとコーラとパンを持って外を歩いていても誰も風邪ひきだなんて気が付かなそうです。逆にお粥とすりりんごを手に町を歩けばみんな 心配してくれるでしょうね、色々な意味で。まあ、風邪をひいたら家の中で大人しく治すのが一番です。とりあえず今年は風邪をひきたくないと思っています。 …ハークション!


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    花火          2006年1月

    日本の花火の季節は夏。ではドイツは―?

    ドイツでは特定期間外での個人向け花火の販売・使用を禁止しています。年末の3日間にしか家庭用の花火は販売されず、 しかも花火を使ってもいいのは大晦日(年明け)の夜だけです。そうです、花火は爆発物ですから普段はそこら中でやって 良いものではないのです!

    たかが一般人が使う花火で大げさな…と思われるかもしれません。しかし、あなどるなかれ、個人用といって日本の手持ち花火を 想像してはいけません。ドイツ人が購入するのは小型ミサイルのようなロケット花火や花火師が上げるような大きめの打ち上げ花火 なのです。むしろその様な爆薬を平然と一般人に売ってしまう(買ってしかも着火してしまう)ドイツ人の感覚がすごいと思われて ならない2005年の幕引き2006年の幕開け。今年も例外なく大晦日の空、黒いキャンバスにはたくさんの火の花が咲き乱れました。 歓喜の声、喜びの歌、今年はたくさん良いことがありますように。心から願ってやみません。

    ところで、何も知らなかった赴任初めての年越しの夜。突然外で激しい爆発音が響き渡りました。窓ガラスの向こうに映る火煙。 寝ていた私は酷くおびえたのを思い出します。銃撃戦かテロでもあったのかと。恐る恐る外を見ると、それがハッピーニューイヤー に沸き立つ人の群れと分かり安心しましたが、次の朝道路に散らばる無数の花火の残骸はある意味で凄惨でした。誰が片付けるのだろうとしばらく気になってしょうがなかったのを思い出します。 そんなわけでドイツの花火の季節は冬。厳密にはたった一晩なのでした。

    おまけ
    スイスでしか見たことがないのですが、ティッシュボンベと呼ばれるクラッカーの一種があります。 それは見た目が打ち上げ花火の様な筒状の花火です。筒の中は空洞になっていてお菓子や飾り、 おもちゃなどを予め入れて蓋をしておきます。
    「さあ子供たち、ティッシュボンベに火をつけますよ。」「わーい!」
    導火線にをつけて耳を塞いで・・・ボカン!
    中に入れた物が勢い良く外へ飛び出し、子供たちは大はしゃぎ。こんな物、日本にもありますか?

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    春ですね          2006年2月

    ここボンも、1月を過ぎてから寒さが厳しくなりました。
    毎朝、玄関の温度計は両手で暖めてやりたくなるほどに水銀が凍えて縮み上がっています。ボンはドイツの中でも比較的温 かい地域ではありますが、ここのところ明け方にマイナス10度近くまで下がる日が続いていました。庭の雑草にびっしり霜が下りて 萎びてしまっていましたが、昼になると太陽の光を浴びて再び元気に葉っぱを広げていている姿を見て、健気だなあと思いました。 日本だったらこの時期、まあ、所にもよると思うのですけれど、雪が降り積 もっているので植物を目にするのはちょっと先という感じがしますが、ボンは雪が少ないので街中には寒中でもいくらかの緑が見 られ、中には花をつけている頑張り屋の花たちもいます。

    代表的な花はエリカです。こんもりとした茂みを成す常緑の植物で、冬のこの時期冷たい風にさらされながら米粒の様に小さな 白や赤や桃色の花を付けています。殺風景な庭先もこのささやかな花たちのお陰で随分見応えのあるものになります。 ローズマリーやコニファーも常緑植物で人気があるようですが、寒さに負けず花を咲かすエリカは抜きん出て人気があるように感じ ます。また、ふと気が付くと去年と同じ場所から真っ白なつぼみを提げたかわいらしい花たちが顔を出していました。 毎年約束したように2月になれば花をつけるスノードロップ。その優しい容姿に似合った素敵な昔話があって、 雪に自分の色を分けてあげたから雪の降る季節に咲くことを許されたというのです。
    もう少しするとクロッカスやスイセンも顔を出すでしょう。そうすると春です。春は皆が待ち焦がれています。

    春をお祝いするお祭り、カーニバルももう直ぐ。冬の間中溜まったフラストレーションが一気に弾けてドイツはまさに春を迎えます。

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    引越し          2006年3月

    学生都市であるボンは、3月から4月と9月から10月にかけてやってくる新入生、そして卒業していく学生たちのせいで引越し シーズンになります。私もひょんなことから引越しすることになりました。

    新聞やインターネットにはたくさんの物件が紹介されていますが、新居を探すのは大変。どれだけ電話で話しても、 インターネットで情報を見ても、やっぱり最後には自分の足で回って 見るしかありません。ドイツ人曰く10軒以上見てから決めなさいとのこと。首尾よく良い物件が見つかってもいざ契約書に望むと 様々に制約があったり、自分に合わない不利な条件があったりとなかなか決心が付けられないものです。それでもまあ何とか納得 して入居することになるでしょうが、この時、日本人ならばビックリすることがあるのです。
    なんと台所がついていないのです。 いや、そんな物件は日本にもあるでしょう。でも、台所用のスペースに蛇口だけが付いている姿を目の当たりにすると、これから 自分がしなくてはならない事の多さを思って気が重くなります。
    ちなみに、ドイツの貸家は台所が付いていたり、いなかったり、 流し場だけだったり、水道が有ったり無かったり、ドイツ国内でも州によって大家さんの義務が異なっているそうです。
    ドイツ人が家をとても大切にするというのは皆さんどこかで聞いたことがあるかもしれませんが、ものすごく立派なシステム キッチンを持っているドイツ人が、それが汚れるのがいやだからあまり使わないというのを聞いたことがあります。 思わず首をかしげてしまいますが、自分で一からそろえたキッチン(高い買物です)を大事に使おうという気持ちは、何だか痛 いほど分かる気がしてなりません。

    春分の温かい日差しが家具の揃わない我が家の壁を白く照らしています。



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    乾燥と体臭          2006年4月

    4月、ドイツは特に大気が不安定で一日の内に全ての天気がある日が続きます。朝晴れて、昼雨と強い風、 夕方には日差しが雲を裂き、夜曇が星を隠すといった具合です。

    普段、ドイツ(ボン)は大陸性気候のせいで日本と比べものにならないほど乾燥しています。雨は降るし、 カビも生えますが、日本の梅雨のように忘れ去られた冷蔵庫の奥で"ナウシカの腐海"が生まれる事は希です。
    開封したお菓子が湿気てしまうとその風味も歯ごたえも最悪になりますが、その様な事態になる事はありません…、 と、断言する自信がありませんが、開封したお菓子の袋をそのまま放置しても、そのパリポリ感は2、3日持続します。 これは私自身が実証済みです。

    ヨーロッパの人が日本人に比べてそれ程頻繁にお風呂に入らないのも、乾燥した気候に起因するのでしょう。 2、3日シャワーを浴びなくても不快ではないですし、むしろ毎日シャワーを使うことに対してアレルギー的 嫌悪を示す人もいます。毎日体を洗うと皮膚の油脂が全部無くなって肌荒れしてしまうということも聞きます。
    それにしても、臭くないのかと気になるところですが、ヨーロッパで市販されている制汗スプレーの強烈な匂いを嗅ぐと 「然り?」と思ってしまいます。真夏でも生活していて汗がにじむなんて事は(エアコンが無いにも関わらず) 滅多に無いわけで、そうなるとますます体を洗う義務感が薄れる気がします。

    汗をかかない→体を洗わない→臭くなる→匂い消し
    という連鎖を考えた時、オーデコロンの発祥がドイツであること を思い出しました。2日前開封したカッパえびせん(日本から送って頂いた差し入れ)を美味しく頬張りながら、 乾燥と体臭の結びつきの側面を思ったとある小春日和でした。

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    病院食          2006年5,6月

    病院食―。それは、おかゆや味の薄い吸い物、申し訳程度の肉料理や、食べたくても食べられない精神的苦痛や、 落としても割れないプラスチック容器から醸し出される"病人"という自己暗示まで含めてなんとなく美味しくないと 思えてきます。

    最近日本の病院では食事もかなり工夫されていると聞きますが、ドイツの病院食はどうだと思いますか?
    まず第一に言える事は洋食だという事。当たり前ですが日本食が出てくることは殆ど無いでしょう。 メニューは日替わりになっていて色々あるようですが、目を引くのはフライドポテトやミートソーススパゲッティーなど、 何だか体に悪そうな料理。まあ、確かに骨折や出産で病院を訪れた患者にまで胃腸に優しい料理を強要する必要は無いかも しれません。きっと重病人や高血圧の人たちにはそれなりに工夫された料理が出されると思うのですが、 基本的な味付けはかなり濃く、自宅で日本食を作って食べた方がよっぽど病院食っぽい気がしてなりません。
    それから、朝食と夕食は基本的にパンです。これはドイツの食文化でして、普通、朝はパンとジャム、昼に温かい料理 (ジャガイモと肉など)、そして夜はハムやチーズとパンを食べるのです。この食事スタイルは病院においても同じですから、 日本人がドイツで入院したとしたら「病院食だな」と感じるのは、料理の味よりもむしろドイツの食文化の方にかもしれませんね・・・。

    ここまで書いてちょっとけなし気味な気もしますのでフォローを入れると、朝食に食べる丸パンは本当に美味しいです。 ドイツに来る機会があったら是非是非味わって欲しいドイツの味です。

    しかしながらまもなくドイツのワールドカップ。誰もドイツの病院食を味わうことなく 素晴らしいプレーを見せてくれる事を祈るばかりです。

    Haxe
    脂っこいものばかり食べてはいけません

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    切符自動販売機          2006年8月

    便利なものの中にも、不便なものがあります。"のろい"、"故障が多い"、"操作が分かり辛い"の3拍子揃ってドイツの切符 自動販売機が代表格です。

    コインは一枚ずつゆっくりと入れてください。慌てて何枚も入れるとカウントしてくれないばかりか飲み込んだまま返って こないことがよくあります。
    お札が使えない販売機も多いので小銭は大変重宝しますが、硬貨が増えると財布が重いので優先して使ってしまいがち。 それが後に"いたたまれない状況"を連れて来ます。
    例えば、無人駅のお札が使えない切符販売機での出来事。ちょうど小銭を切らせていて切符が買えない時。キセルをする 訳にもいかず、通りすがりのお兄さんに換金してもらおうとすると彼も小銭が無い。仕方なく近くのスーパーで欲しくも 無いお菓子を買って小銭を工面しました。

    他の某日、電車出発2分前に息を切らせて駅に到着。遠くに見える電車のフロントガラス。切符売り場には長蛇の列でも う自動販売機を使うしかない。見つけた自動販売機に札の投入口を探すも、それがカードしか使えないタイプの自動販売機 。ホームには電車の到着を告げるアナウンス。カード支払している時間は無い。大慌てで現金が使える販売機を見つけて札 を入れるも受付拒否。見れば液晶モニターのお札の絵柄にバッテンマークが点灯し、今は小銭しか使えないということを 示している。がま口を開くと寂しそうな銅銭が数枚。走り去る電車を見送りながら、どうすれば良かったのだろうと意味の 無い反省をすることもありました。

    ところで、ボンの構内に新しい切符販売機が設置されるようですが、一つ日本の販売機を購入してくれないでしょうか・・・。

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    指輪          2006年7月

    久しぶりにハンブルクに住んでいる知人のドイツ人男性に会いに行きました。 その彼が両手に指輪をしているのを見て、思い切ってどういう意味があるのか聞いてみました。てっきり結婚指輪だと 思っていた左手の、見た感じにちょっと派手な指輪が実は別の意味があると聞いて驚くと共に、じゃあ、結婚指輪は 何処にあるのかと訪ねると右手の薬指の指輪がそれだと教えてくれました。

    ドイツでは伝統的に結婚指輪は右手の薬指にはめるそうです。だから、それを知らないでアプローチをかけると、 「あら、私結婚しているのよ。」ということになりますので注意しましょう。結婚指輪の材質も伝統的には金で、この知人に、 日本ではプラチナリングが多いと言うと、「じゃあ日本の男性はいつも高い買い物をしなくちゃならないね」と笑っていました。

    ヨーロッパでは装飾品を身に付ける男性がたくさんいます。ファッションとして身に付けるのがほとんどでしょうが、 それ以外の意味があることもしばしば。例えば、農家の男性などは古くから魔よけとしてピアスをしていることがあります。 逆に仕事で無くしてしまうかもしれないからといって、マレッジリングはタンスの中にしまわれたまま長いこと日の目を見ないことも。
    ところで、知人の右手のリングは何かということですが、お祖父さんの形見だそうです。彼の家族は昔のドイツ貴族で、 家元の長がその指輪を継承しているということでした。お祖父さんはその指輪と結婚指輪を長年に亘って同じ指にはめていたので、 やがて擦れ合って磨耗してしまったそうです。そこで、彼が指輪を受取る時、お祖父さんの結婚指輪に溶接したということでした。 まさに世界に1つだけの指輪ですね。

    指輪が繋ぐ家族の歴史。これこそ指輪物語だなあと思いました。

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    置き引き被害          2006年9月

    先日、旅行先で置き引きの被害にあいました。普段から外に出るときには十分に注意しているつもりだっただ けにショックでした。幸い最重要なもの(パスポートやお金、カード)などは取られなかったのですが、 リュックサックをまんまと盗まれてしまいました。

    それは古典的な意識をそらせる手口でした。

    まず1人が私に道を教えてくれと話してきます。普通に考えて観光客に道を聞くなんて怪しいと思うべき なのですが、3人で旅行していた為気が緩んでいたのでしょう、親切に対応してしまいました。 地図を覗き込んでいる隙に、もう一人が私の手元から一番遠くにあったリュックサックを取っていった ようです。奇しくも私の誕生日。苦い27歳の幕開けとなりました。

    油断大敵という言葉を今まさに噛み締めています。ドイツに住んで3年が経過し、何となくできてしまう事が 多くなりました。その反面緊張感が無くなり非常に無防備だったのかと思います。見た目ですぐに欧州人ではな いことが分かってしまうのですから、どんなに慣れていようとも外国人として行動しなくてはいけません。 悔しさと反省が心の中で渦巻いています。
    先日ドイツ国内の列車内で爆弾の入ったトランクが見つかりました。幸いにも爆発しなかったようですが、 これを以ってドイツ国内のテロ警戒が厳しくなっているのは言うまでもありません。日本国内でも不可解 な事件が続発していますし、世界的に見てこの世界は決して平和ではないと分かります。
    ちょっとした油断は誰にでもあります。それにつけこむかどうかは悪党のインスピレーションと運です。 そして油断は油断している本人には絶対分からないものです。
    そういうわけで今の私の警戒は最も高いレベルに引き上げられています(そう信じています)。

    登山
    アルプスの上なら盗人もいまいが。
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    自転車          2006年10月

    ドイツで知人からちょっと自転車を借りようと思ってもすぐそのままこぎ出せる日本人はあまりいないでしょう。 サドルが異常に高いのです。
    確かに欧州人は足が長い分サドルを高くしなければこぎづらいと思うし、ある程度サドルが高ければペダルへの力の 伝達もうまく行くのは分かります。でも、足が長いからという次元の話ではなく、その自転車の持ち主さえも、 またがったままでは両足が地面に着きません。何故そうなのか訪ねると、口をそろえて言うのは、"足が地面に着 いたら危ない"ということ。こいでいる時に地面に足がすれるのが怖いというのです。

    日本人の常識としてサドルの高さは、停止時に両端のつま先が軽く地面に着く程度だと思うのですが、ドイツの常識 では危険だという判断。日本のように学校へ警察署の人が来て自転車教室を開いてくれるらしいのですが、 本当にそうやって指導しているのでしょうか?
    身の丈の小さな日本人女性などはドイツで自転車を手に入れるのも大変です。普通に売っている自転車ではサドルを 一番低くしても月面歩行のように、或いはバレエのポワントのようにならざるを得ないのです。 しょうがないから意を決して子供用自転車を購入するのもひとつの手立てです…。

    子供用の自転車といえば、ドイツではペダル(チェーン)の付いていない足こぎ自転車をよく見かけます。 小さな木製の二輪車で、普通の自転車に乗る前の下準備のような効果がありそうです。これで練習しておけば補助輪なし の自転車にもすぐに乗れてしまうのではないかと思えるのですがどうなのでしょうか。
    確かなのは練習をしない限り自転車に乗れるようにならないということです。

    fahrrad
    乗っている本人でさえ足がつかない…

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    語学学校          2006年11月

    ドイツ語の語学学校へ通っているのですが、他の国から来た人(つまり外国人)と一緒にドイツ語を学ぶのはとても 面白いものです。
    私のクラスは15名で、会話中心の授業をしています。出身はポーランド、チェコ、ハンガリー、 ウクライナなど東欧諸国から、モロッコ、メキシコ、インド、USA、台湾、そして日本と世界中の民族が一堂に会して ドイツ語を学んでいるのです。先生は基本的にドイツ語しか話さず、授業は終始ドイツ語のみで行われます。 これはドイツにおける全ての語学学校に共通で、英語のクラスでは英語だけ、フランス語ならフランス語のみ、 勿論日本語なら日本語のみ使うのが原則です。

    昨日の授業では文化の違い、カルチャーショックがテーマになりました。外国人にとって最も身近で、最も頻繁に持 ち上がる話題です。まずはそれぞれが、ドイツに来て感じた文化の違いを紹介していきました。また、どんな時に文化 の差を感じるかということに言及した時、チェコ人の女の子が、
    「日本人は湯飲みの中が空になると相手の 意思を聞かずに何度でも注いでくるんでしょう?」
    と言ったので、
    「そうだよ、だからもういらない時は手を 付けずに置いておいて、帰る間際に一気飲みするんだよ」
    と言うと爆笑していました。

    衝撃的だったのは、ハンガリーの酒場でビールの乾杯をしてはいけないこと。ドイツ人は勿論、日本人だってビール グラスを付き合わせるのが普通なのに、ハンガリーではかなりのタブーらしいです。それは人前で素っ裸になって 踊るほど気まずい行為なのだとか・・・。
    ポーランド人:「じゃあ、ドイツ人がハンガリーの酒場で乾杯している姿は相当恥ずかしいんだね。」
    ハンガリー人:「そんなの見たら俺は帰るよ!」
    ウクライナ人:「そうやって地元の人がみんな帰ったらハンガリーの酒場がドイツの酒場になっちゃうよ!」

    Bier
    お酒が入ると会話が弾んだり、トラブルになったり…

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    インターネット          2006年11月

    ドイツのテレビコマーシャルでは頻繁にDSLの通信速度が非常に早くなったと言う文句を見かけます。私自身この春までダ イアルアップでインターネットをしていました。ウェブサイトを開いてもなかなかデータが読み込まれずイライラしていた のですが、いい加減ナローバンドともおさらばしたいと思いIDSLを使い始めました。雲泥の差がありますね、非常に快適だ なあと思って使っています。しかし日本では、もはや光ファイバーが台頭しISDN利用者もADSL以上の通信速度がある環境へ とどんどん乗り換えていると聞きました。光ファイバーなんてドイツの何処へ行けば使えるのでしょう!?

    パソコン通信の目覚ましい、もとい目まぐるしい進化には舌を巻くばかりですが、伝達が早くなればなるほど時間が無くな るなあと思うこの頃です。

    確かにインターネット環境が早くなれば便利です。そして、モバイルが充実して人は何時でも誰かと繋がっていられるよう になりました。それと同時に不思議と時間が削られてしまうのです。楽になるどころか益々忙しくなるばかり…。

    18世紀のヨーロッパに誕生したモーツアルトやバッハの音楽は現代でも多くの人に演奏されています。しかし聞いた話によ ると当時の楽譜をもとに演奏すると現代の聴衆は退屈してしまうらしいのです。それはテンポが遅いためで、今の人がいか に早い生活速度で生きているかよく分かることではないかと思います。100年後にはメヌエットでパラパラが踊れるほどに テンポアップしてしまうのでしょうか?

    昔の人が鈍いのか、今の人がせっかちなのか、はたまたドイツ人が遅れているのか、日本人が進みすぎているのか、 いずれにしても時計が刻む時間だけは今も昔も日本もドイツも24時間と決まっています。

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    つぶれない店          2006年12月

    ボンの町の中でやたら見かけるお店屋さんに靴屋と眼鏡屋と薬屋があります。あんまりたくさんあるので、そんなに 林立して経営は大丈夫なのか共倒れしないのかと心配になりますが、不思議とこの三業種に関してはつぶれたお店を 見たことがありません。そして、薬屋については最近理由が分かったような気がしました。

    ドイツでは医者にかかった場合(特に診療所など)、薬はその場でもらえません。どうするのかというと薬屋に買い に行くのです。例えば風邪と診断され、ドクターが処方箋に『咳止めの錠剤と解熱剤』など書き込んでいたらそれを 薬屋に持って行って購入します。いちいち薬局を探さなくてはいけないのは面倒くさいと思うのですが…。そうです 、医者のあるところに薬屋はあるのです。

    先日ぎっくり腰をやらかし整体医院にかかりました。街中のお医者さんで4階建てのビルの3階にありました。この ビルの2階は皮膚科4階は婦人科でした。そしてこのビルの1階は薬屋でした。あんまりにも都合がよいと思い、他 の場所の薬屋が入っている建物をよく見てみると十中八九すぐ脇か建物の中に診療所が見つかりました。なるほど、 どおりで薬屋がつぶれないわけです。過剰にあるように見えて実は適所に陣を構えていたということです。
    逆に言えば医者を見つけたければ薬屋を探せばいいともいえます。ドイツの薬屋の看板は赤字のAに蛇が絡みついた杯 がトレードマークです。Aは薬局(アポテーケ)を意味しています。

    もしかしたら靴屋のそばや眼鏡屋のすぐ隣りにも何か関連する業種が見つかるのかもしれません。
    あるいは風が吹けば桶屋がもうかる何かすごい事が起こっているのでしょうか。



    Apotheke
    薬屋さんのマーク

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    リンゴの味          2007年1月

    この間リンゴを購入したところ、「甘いのがいいですか、酸っぱいのがいいですか?」と聞かれました。日本人の感覚 からすると一瞬ナンセンスな質問に思えます。「そりゃ甘いのがいいに決まっている」と声をそろえるに違いありません。 しかしこの質問の趣旨は「どの品種がいいですか?」なのです。

    ドイツで生産されるリンゴの種類は普通60程度ですが、常食されない品種をあわせると約1500種が育てられています。 リンゴと言えど、その形は勿論色や大きさ、味や香りや固さも様々。ドイツに来てから私も随分リンゴの品種を覚えました。
    有名なジョナゴールド、ゴールデンデリシャスをはじめ、早取のエルスター、日本ではあまり見かけない酸っぱいボスコープや オレンジコックス、薫り高いブレーブルン、歯ごたえ抜群のガラ、新品種ピンクレディーなど、挙げたら限が無いですが、 どれこれも個性的です。ちなみに日本のフジも売られていますが、その味はサッパリとしていて瑞々しくピンク色の中玉 のリンゴとして店頭に並んでいます。
    ドイツに来てからリンゴにこんなたくさんの風味があることを初めて知りました。
    日本ではデキストリン(通称リンゴのミツ)が入ったリンゴが好まれますが、ドイツではそのようなリンゴに出会うことは ありません。そしていびつに歪んだり、斑点があったり、少し黒ずんでいたり、色のつきが悪かったりするのも当たり前 ですが、それでも1等級だったりします。
    けっして日本のリンゴ文化をけなして言っているわけではないのですが、世界には一玉100円するリンゴや桐の箱に入った メロンに見向きもせず、縮れたセーターの裾で小さなリンゴをキュッキュと磨いて噛り付く人達もたくさんいます。

    売り子の問いかけに「甘過ぎず酸っぱくないやつ」と答えると、ブレーブルンの大玉を差し出されました。ちなみに私の 一番好きなリンゴです。

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    健康意識          2007年2月

    ドイツで有機産物やエコ商品が普及して久しいですが、近年ではどの店にも有機産物のコーナーが置いてあり、専門の スーパーや直売場が次々とオープンし、相変わらず根強い人気を示しています。自然にやさしく安全なことが消費者に とって重要な指標となっている表れといえるでしょう。このドイツの国民的オーガニックブームと、近年の日本の健康 ブームは似て異なものです。
    日本ではテレビで紹介された食材が次の日スーパーから消えるという奇妙な現象が起こります。例えば納豆が良いといえ ば皆が買い、きな粉が良いと言えばこぞってきな粉の袋を手に取っていますよね。しかし、その食材の原料である大豆の 出所に言及しません。多くの人が遺伝子組み換え作物(GM作物)が含まれているかどうかを確認する前に、その食材の持つ 神がかりな効用のみに注目してしまうでしょう。
    ドイツでは現在GM作物を認めていません。逆に言えば、そのようなものを含む食品はどんなに良い効果をもたらしても健康に 良いわけがないと考えているということです。
    日本人は効用を評価し、ドイツ人は安全性を評価しているのが実に良く分かります。
    DHAやポリフェノール、各種ビタミン、初めて聞く様な横文字の化学物質が宣伝文句になったり、それらが添加された食品が 売られたりしていますが、それらを食べて健康になるのと、無農薬、有機肥料、無添加の食品(特に農作物)を食べて健康 になるのでは、何かニュアンスが違うように思います。ドイツで流行っているのは食物本来の栄養価を安全に得る事であり、 日本で流行っているのは、食物に含まれる潜在的な効果を引き出す事なのではないでしょうか。
    健康でありたいと思うのは誰でも一緒。しかし、どうすることが体に良いのか(不足する栄養を補うのか、害のある物質を 排除するのか)同じ食のブームなのにとても同じ事を話題にしているようには思えませんね。

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    嗜好の変化?          2007年2月

    私がドイツで生活するようになって大幅に消費が増えた食材があります。なんだと思いますか?

    近年の健康ブームで日本では体に良い食べ物やバランスの良い食事が注目を浴びています。コルステロールを押さえた サラダ油や低糖無糖を謳うお菓子をはじめ難しい化学専門用語を含んだ食材など、どんな食品を見ても体を思って選ばなく てはいけないという暗示が隠れているようで強制観念に囚われそうな気もします。
    ドイツでもヘルシーな日本食が注目されてきています。寿司や豆腐、椎茸はかなり一般化してきました。
    そんな時代、私がドイツで消費するようになったのはバター。一週間に200gまではいかなくても、1ヶ月に3個(一つ250g) ほど消費しています。日本にいる時、1年に3つ消費しなかったのと比べると歴然とした差があります。その主な原因はパン 食文化でしょう。パンを食べる時、バターは必需品。朝食にはバターとジャムがたっぷりのドイツパンを食べるのが 日課です。
    勿論マーガリンも売っていますが、バターに拘るのは独特の旨みのせいかと思います。そしてもう一点、無塩バターが 主流だからです。塩味がしないのでなんにでも活用できることが私をバター消費者へと駆り立てます。
    日本人の感覚から言って、このバター消費量は異常です。脂肪が気にならないわけではないですし、世界が健康ブームへ 向かう中、自分だけ逆方向を向いている様な気もします。しかし、"食"とは人を良くすると書きますし、食べて不健康に< なるというのは元々食生活が偏っているからではないでしょうか。むしろ、健康ブームに流されることなく、美味しいもの を美味しく、必要量取ることが大切なんだと、自分なりの解釈をしているところです。

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    妊娠・出産          2007年3月

    ドイツ語のインフォアーベント(Infoabend)というのは直訳すれば『情報の夕べ』ということになるのですが、 何かと言うと、病院や学校、施設などの説明会のことです。仕事が終わる夕方に行うのでそう呼ばれるのだと思います 。学校や病院などでは積極的に行われており、どんな設備があるのか、どんなスタッフがいるのかを細かく説明してもらう ことができます。

    私も妻の出産に際して産婦人科が催すインフォアーベントにいくつか参加したことがあります。どのような分娩室が準備 されているのか、どのような医師・助産婦のサポートを受けられるのか、彼らの実績、周辺環境や入院施設に至るまで説明 を受けることができると共に、帝王切開、難産への対処、臍帯血など赤ちゃんがお腹にいれば当然気になることについても 話を聞いてもらえます。そして、隅々までその病院を見た上でそこで出産するかどうかを決めることができるのです。 参加者にはお腹の大きな奥さんとそれを気遣う旦那さん、まだスキップできそうなくらい身軽な妊婦さん、これから赤ちゃん を考えているのだろうと思われるカップルなど色々な状況の人がいますが、口コミで人気のある産科医院などには一度の インフォアーベントに30人ほども集まることもありました。
    インフォアーベントの良さは前評判や人の意見ではなく、自分の目で見て自分で納得できる点にあります。

    日本にインフォアーベント同様の説明会があるのかどうか私は知らないのですが、この説明会に参加したことで出産に関す るイメージが現実的なものとなったのは確かです。良い取組みだなあと思う反面、多忙な時間を割いて一般人を相手に説明会 を開いてくれる先生方には頭が下がる思いでした。

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    IKEA          2007年4月

    スウェーデンの家具メーカー"イケア(IKEA)"がドイツにやってきたのはもう30年以上も前の事になるそうです。 イケアは日本で昨年4月に舟橋にオープンしましたが、実はそれより20年以上も前に日本進出を果たし販売を開始していた ようです。しかし、当時の日本人には分解された家具を自分で組み立てるスタイルが受け入れられなかったようで結局撤退 していたようです。ドイツやオランダなどでイケアの組み立てる家具がいち早く浸透した理由には、何でも自分で作るという 精神が強い気ためではないかと思います。

    農業研修生たちが研修を終え日本へ帰国する時に口をそろえて言うのは、農場主は何でも自分で作っていた、何でも自分で直し ていたということ。
    日本なら修理に出すレベルの車の故障や外部発注するような機械の製作まで手がける農場があります。 配管、電気工、屋根瓦張り、床板の張替えなど、彼らはその道の専門家ではないはずなのですが、あまりにも上手にやるので 驚きます。終いには自分で家を作っている人もいます。ヨーロッパは地震も少ないので日本のように注意して建築しなくても 良いかもしれませんが、それにしても家を自分で建ててみようという発想に結びつく思考に感心してしまいます。 このレベルの人からすれば、家具を自分で組み立てるなんて当たり前の事なのかもしれません。

    知人がガールフレンドの誕生日に金属製のチェスを送ったのですが、残念な事にビショップの駒が一つ足りませんでした。 普通なら製造元に連絡して交換してもらうと思います。
    ところが彼は、
    「ああ、これなら金属を溶かして自分で作ってあげるよ」
    と言ったのです。

    世界で一つだけのビショップの駒を持つチェス盤は思いがけずロマンチックだと思いました。

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    つぶれる商店街          2007年5月

    今でこそ365日24時間営業の店がたくさんある日本ですが、かつては夕方6時まで営業、日曜日は休みのお店が多かったので はないでしょうか。通常の家族経営の場合ならば年中無休24時間で営業する事は不可能でした。
    私達の暮らしは大型スーパーやデパートが地方に参入してきたお陰で快適になった半面、ショッピングモールなどが次々に 立ち並び、商店街が一つまた一つと消えて行く事になりました。本質的な部分で私達が求めてきた利便性や効率性が結局は 地方から活力を奪う原因となったのではないでしょうか。
    こうした問題がある中で、日本では地域振興や地産地消が注目されるようになりました。これらの取組みは食の安全や環境保 護にも与しています。大都市で生み出されるまとまった利益とは別に、地方のもつ多様性と可能性の豊富さに気付きはじめて いるのかもしれません。

    一方ドイツでは法律によって日曜日の営業が禁止され、営業時間も8時までとされてきましたが、昨年末に法律が改定、 緩和されて店の営業時間が長くなりました。10時まで開いている店があり重宝しますが、そんな夜遅くまで開いているお店 は企業が運営する大型店舗やデパートです。自営業の店は相変わらず6時半ごろに閉まっています。

    ここ数年ボンの街の老舗レストランや雑貨屋、肉屋などが次々とつぶれていっています。どうやら街の地価や賃貸料が急激に 上がったことが関係しているようです。しかしながら家族経営の店がつぶれるのと反比例して、大型チェーン店が近郊地域に 新しい店舗を増やしていることが完全に無関係とは思えません。
    ドイツのどこの町でもよく見かけるスーパーチェーン 店のノッペリした四角い建造物を見て、ドイツもまた日本が歩んだ道筋に沿って進んでいっている気がしてなりません。

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    体感時間          2007年6月

    タイムスケジュールやメリハリは仕事の真面目さや不真面目さの尺度として重要な意味を持っていると思います。時間にルーズであったり、 決められた事をきちんとできない事は仕事の上で最も嫌われる事です。ドイツでもそれは同じ…だと思うのですが―。

    例えば電車の停車線(ドアが来る場所を示したライン)。日本の電車はこの線に合わせて停車しなくてはいけませんし、 オーバーランなどもってのほか。それに比べてドイツのプラットホームにはセクターしかなくて、その数十メートルほどの 間に停車すればいいという感覚で電車が入ってきます。たくさんの人が待っているのにあえて誰もいないところで停車してい る電車さえあるような気がします。そうなるともはやオーバーランどころではなく、乗客がランを余儀なくされます。

    日本では電車の時刻は秒単位で管理され、電車の到着が数秒遅れるだけで大問題になります。ドイツでは時刻表通りに電車 が走らないのが当たりまえ。時計を見て乗り遅れたと思っていた電車がまだ到着していない事がよくあります。電車の遅刻 に車掌は悪びれた様子も無く、客も誰一人その事にクレームを言おうとしません。ドイツにおいて電車の遅刻は実に肯定的です。 笑い話ですが、旅行ツアーを組むとします。同じ日程表を日本語、ドイツ語、フランス語で書くときに、時間割については 同じものを使う事が出来ません。日本人には分単位で立てられたスケジュールを出す必要があります。しかし、ドイツ人に はそこまで細かいスケジュールは必要ありません。大体の時間で渡せば分かってもらえます。さらに、フランスについては、 午前午後で分けられたスケジュール表があれば十分です。

    国境をまたぐと人の時間に対する感覚が変わります。日本人のように24時間を忙しく生きるも、欧州人のようにのんびり生 きるもそれぞれの習慣なのでしょうかね。

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    車の好み          2007年7月

    何色の車に乗りたいか、車を選ぶときの楽しい悩みです。
    ヨーロッパでは銀色や黒の車が好まれているようです。これらのいわゆる無彩色の車が全体の6割ほどを占めています 。これは日本でも同じ傾向にあるようで、無彩色の割合が高くなっています。
    しかし、同じ無彩色でも白に関しては日本とヨーロッパで大きな差があり、ヨーロッパでは一割に遠く及ばないのに、 日本では相変わらず根強い人気があります。白い車というと欧州では仕事用の車というイメージがあります。統計に よると運送トラックやバーンなどはその4割ほどが白いようです。確かにドイツで見かける乗用車には白いものが少ない ような気がします。
    また、面白い事に自動車メーカーごとに売れ筋の色があり、例えば、BMWやアウディーならば黒、トヨタやフランスの プジョーなどは銀色の車が一番生産されているようです。チェコのSkoda(シュコダ)やフランスのCitroen(シトロエン) などは、有彩色(赤や緑)の生産割合が他社に比べて高いのが特徴です。
    これをそのままメーカーのイメージカラーとして、高速道路をエレガントに走る黒いBMW、颯爽と湾岸線を走り抜ける銀の トヨタ、街角のお洒落なグリーンのシトロエンと言った感じでしょうか…あくまで私の想像ですが。

    近年の欧州では日本車が大変人気です。デザイン、価格も魅力的ですが、何と言っても故障が少ない事がユーザーの支持を受 ける理由のようです。知人のドイツ人にも日本車に乗り始めてからはもう他のメーカーは考えられないと言う人がいます。
    私ももちろん日本車に乗っています。ドイツで日本車に乗っているということは外車に乗っている事になるのでしょうか、 ちょっとひねくれた優越感です。

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    育児休暇          2007年9月

    男女共同参画の考え方が一般化しつつある現代で、女性の社会的地位向上が盛んに叫ばれるようになっていますが、反対に男が参加する家事、 家庭も重視する人が増えてきているかと思います。それは夫婦で働く場合や核家族化した現代の一般家庭にとって天秤の釣り合いを取るような もなのかもしれません。物理的にも、女性が家庭から出て行くことが増えれば誰かがそれを補う必要があります。

    ドイツには育児休暇という制度があります。日本にもありますが、特に男性で育児休業を取るのが難しいのが今日の社会だと思います。じゃあ ドイツなら簡単に取れるのか、と言うと、もちろん皆がみんな取るわけではないですが、以前より積極的に育児休暇を取るお 父さんが増えています。会社の中で誰か1人が手を上げるとじゃあ自分もと何人かが同調するケースが見られるようです。
    ドイツのスーパーではよくベビーカーを押しながら買い物をするパパの姿を見かけます。本人に確かめたわけではないので すが、育児休暇の男性ではないかと思います。仕事に復帰した妻のバックアップに回っているのかもしれません。平日の昼 間に子供と一緒に買い物に行くチャンスがあるというのは日本では稀有な光景であると同時に、なんとも羨ましい気がします。
    もちろん普通に休暇を使って家族サービスという事はできます。しかし、何の気兼ねも無く子育てに没頭するには不十分です。

    赤ちゃんが生まれてすぐのバタバタとした時、家庭に必要なのは信頼の置ける頼りになる存在です。まさに父親のことではないでし ょうか。それを社会的に優遇してくれる男性の育児休暇こそ、男女同権において男性側の権利といえる上、女性側にとって も大きな支えとなるに違いありません。

    社会基盤の最小単位ともいえる家族におけるジェンダーフリーが本当の意味で社会に男女同権をもたらす突破口となるの ではないかと思います。

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    東ドイツへ          2007年10月

    日本人のドイツ旅行のハイライトからは外れても、ドイツ人から根強い人気があるメクレンブルク=フォアポメルン州。

    ドイツ北部の旧東ドイツ側に位置するドイツで一番人口密度の低いこの州には、白亜の海岸と壮大な自然を目当てにたくさん の観光客が訪れます。この初秋、知人の伝で初めてこの州を訪ねる事になりました。
    東西ドイツの再統一で生まれたこの州の主だった産業は観光と農業。アウトバーンをハンブルクからポーランド方面に進めば、 風景は益々広大な農地と緑に生い茂る雑木林ばかりになります。所々に池や沼地が口を開き、野生のエリカや葦が湿地を埋め 尽くしていました。話によると、かつてはどこもかしこも湿原で、農地利用する為に運河を作って土地を乾かしたのだという ことです。旧東ドイツ時代にはLPG(農業共同生産組合)がこの広大な土地で穀物、畜産などを手がけてきていましたが、今 は会社経営化、個人経営化され、経営規模もかつての2000ha超えの農地を有する経営者はほとんどいなくなっているそうです。
    とはいえ、西側の農家の多くが数十ヘクタール規模で経営しているのに対して東側では数百ヘクタールでの経営が続いています。 世界的に大規模化の傾向にある農業分野において、ドイツ東部ではむしろ農業経営が (分割され)縮小したというのは興味深 い傾向だと思う反面、統一後17年を経て今尚東西の農業に本質的な差異があるように感じました。

    30年来フォアポメルンの地で農業を営む農家さんと話しをする機会がありました。統一によって暮らしが変わった事もさるこ とながら、農業の体系、収入のシステムなどが大きく変わったと言っていました。そして、DDR(東ドイツ)時代の方が良かったとも。

    メクレンブルク=フォアポメルンの夜、去る夏を想いながらのキャンプファイヤー。ゆっくりと迫る夕闇にぽつぽつと姿を現し た星たちが、夜半には天空一面を多い尽くして真平らの地平線にこぼれていきそうでした。

    「ここにはここにしかないものがあるんだよ」

    そう言って皆で見上げた満点の星空を、天の川がぼんやり2つに分断していました。

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    ヴォジョレー・ヌーヴォー          2007年11月

    今年もボジョレーヌーボーの季節がきました。といっても熱狂的なファンがいる日本とは違いドイツの対応は無関心 に限りなく近く、むしろ「それはなんだ?」と聞かれるほどです。確かにドイツにはドイツワインという素晴らしいもの があるわけで、わざわざフランスワイン云々は必要ないということでしょうか。

    ボジョレーヌーボーはその年できたばかりの若いワインで、その解禁日が11月第3木曜日と決まっています。解禁日はかつて 企業が競ってワインを早く売ろうとし、成熟しきらないワインを販売したため設けられたようです。

    ところで、できあがるのを待てないのはどこの国も一緒なのか、ドイツにも成熟しきらないワインを飲む文化があります。 フェダーヴァイザーという白ワイン醸造途中の飲み物です。9月頃から2ヶ月ほどの楽しむ事ができます。発酵中のブドウ 果汁がまだまだたくさんの糖分を保有しているのでとても甘く、アルコール度数は数パーセントから数日置いておくと10 パーセント程度になります。これを飲むと秋がきたのだなあ、寒くなるのだなあと季節を感じるものです。

    成熟には時間がかかります。それをあえて早めたり途中で取り出したりして楽しもうというのだから贅沢と言えば贅沢、 勿体無いと言えば勿体無い話です。ドイツ人にしてもフランス人にしても、完熟まで我慢ができない人が居たということで しょうか。

    お金さえあれば手に入れられるものも融通が利くこともたくさんあります。しかし、根本的に成熟に掛かる時間は早められ ないものです。そして、実際に時間をかけて作ったものは何でも良いものです。
    加速度的な現代において"時は金なり"とは、急ぐ事だけではないのかもしれません。

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    ありがとう日本!          2008年1月

    先の12月、一時帰国の機会を頂き日本へ行ってきました。
    2年半ぶりに踏んだ日本の地。世間が師走で何となく忙しそうだったのですが、それはただ自身のそぞろな気持ちのため だったのかもしれません。
    動く歩道の自動音声に足元の注意をされながら入管を目指し、その間に少しずつ日本の 常識を思い出していました。

    成田エアポートの到着ロビーでは、一目瞭然に大多数となった日本人。初めて会っただろうその人たちを不思議に懐かしく 見回すと、日本へ帰って来たんだなと実感が沸いてきました。東京都内行きのシャトルバスに乗り込み、ドイツより8時間も 早く夕闇に包まれていく大都会の夜景は、所々にあるクリスマスの飾付けも手伝ってお世辞抜きできれいでした。 宿泊のホテルに到着しても、客を迎えるときの挨拶やお辞儀など、些細な動作一つに感激するのでした。何を食べても一流 でした。お米が美味し過ぎて、毎日ご飯3杯おかわりしていました。

    今回の帰国は日本に住んでいれば当たり前の事にいちいち驚き感動していたという点では、外国人の視点で日本を見ていたの だと思います。
    外国には無くて日本にはあるものが見えたような気がします。住めば都といいますが、住まなくなって際立つ良さがあるもの なのだと思いました。

    最近の日本は事件や事故が大きく報道され、ニュースを見れば悲しくなるばかりです。しかし、実際に日本へ帰ってきての 第一印象は、なんて穏やかで秩序だった国なんだろうということです。他国と比較しても仕方の無いことですが、 日本は自信を持って良いと言えるものがたくさんある国だと思います。

    一時帰国で日本パワーをいっぱい浴びて、今年一年も頑張ろうという気持ちにさせてもらいました。

    ありがとうにっぽん!

    今年もどうぞ宜しくお願いします。

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    ドイツで子育て          2008年2月

    子育てでは時として他のパパやママとの情報交換が大変重要になったりしますよね。確かに祖父母が近くにいてくれれば 分かる事もたくさんありますが、全ての家族にそのチャンスがあるわけではありません。そういった意味でも親子教室の ような意見交換の場があると心強いものです。

    ドイツには赤ちゃんの産まれたお母さんの為に様々なプログラムが準備されています。出産後の骨盤体操教室、授乳期には Stillen Cafe(シュティレンカフェー)という母乳育児のママの集会、子供同士を遊ばせるSpiel Gruppe (シュピールグルッペ)などへの参加が可能です。
    また、PEKiPという取組みもあります。ドイツ語のPrager Eltern Kinder Programから頭文字を取ったもので、 「プラハの親子プログラム」と訳せます。チェコの心理学者が提唱した取組みで、母親と子供の絆を強めることを主な 目的とした親子教室です。特徴的なのは参加した赤ちゃん(基本的に1歳未満)を裸にして一緒に遊んだり色々なおもちゃ などで遊ばせたりする事ですが、母親同士の情報交換にも一役買うという点では他のさまざまな取組みと似たところがあ るかもしれません。
    外国人にとってありがたい取組みとしては、教会が主催する託児所兼語学学校というものもあります。お母さんがドイツ語 を勉強している最中、子供達は語学教室に隣接するプレイルームで一緒に遊んでいることができます。しかも驚くなかれ、 教会がボランティアで行うので無料です。
    こういった様々な取組みは小冊子にまとめられて公共施設や病院などに置かれていて、必要に応じて簡単に情報を得る 事ができます。
    ドイツ語の申し込み用紙を手に、一歩踏み出してみれば私達外国人を温かく迎え入れてくれる場所が たくさんあります。

    日本の反対側まで来ても誰かに助けてもらったり一緒に勉強したりできるというのは素晴らしい事です。

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    日本語を学ぶ          2008年3 月

    ドイツの日本語学校では日本での基本的なマナーも教えてくれることがあるそうです。
    ドイツ中西部の町、 ボーフムにある言語研究所LSi(Landesspracheninstitut in der Ruhr-Universitat Bochum)では日本企業や 日本へ赴任する会社員が日本語の勉強をしています。ドイツから日本へ農業研修に来る若者達も日本語をここで学びます。
    今年日本へ渡航する新研修生の激励に訪れた時思ったことを書いてみようと思います。

    「お酌をする時は両手でビール瓶を持って―」

    日本酒の空瓶を手にお酌の練習をするドイツ人生徒達。

    「日本では当たり前の事も、この学校で初めて学ぶのです」

    と、校長のウンケル先生がおっしゃっいます。
    異文化に暮すためには、非常識に対する順応力と寛大さがとても大切です。
    私自身、ドイツに来た当初は、スーパーのレジで手を出しているにも拘らずおつりをテーブルの上に投げ捨てられカチンと きていたものですが、それが当たり前だと分かるとなんとも思わなくなります。
    ドイツ人がプレゼントや名刺を片手で 渡したり、靴を履いたまま家に入る事など考えると、日本人の細やかな気の使い方に感動さえ覚えるものです。 逆に言えばドイツの常識からすれば日本の常識は過剰な部分もあります。人に会う度に頭を下げたり、自分の事を謙遜 したり、怒っているのに笑っていたりするのはやはり不思議に見えるでしょう。

    贈り物をする時、日本では「つまらないものですが…」とか、「粗品ですが…」とかいいながら渡しますが、それをそのまま ドイツ人に言えば「そんなものいらん!」と怒られるでしょう。

    部屋に入るとき「失礼します」と言って入るものですが、部屋に入る時既に失礼をしているようではドイツでは一人前とは 思われないでしょう。

    この語学教室を訪問して一つ気が付いた事があります。
    初めて日本語を教わったドイツ人の若者がぎこちなく「ありがとうございます」と言いながら頭を下げたのですが、 その時相手の目をずっと追いかけて目線だけは外しませんでした。基本的にお辞儀は相手の目線を避ける形で目を 伏せるものなので不自然に見えたのですが、考えてみればドイツでは挨拶のとき相手から目線を逸らすのは無作法な事です。
    こうやって見てみると、文化の違いというのは学んでどうこうできる部分と、言うなれば血のように変えられない部分があるのか もしれないと思うところです。

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    ハーフマラソン          2008年4月

    春を迎え、ドイツ人たちは喜んで外へ飛び出していきます。時間があれば散歩やジョギングしたり公園でサッカーや フリスビーを楽んだり、カフェのテラスでお茶したりしています。3月の最終土曜日からサマータイムが始まったお陰で アフターファイブが有効に使えます。
    都市部に住む人やサラリーマンの人からすればとってもありがたいサマータイム制度ですが、一部の人たちからは 時々不満の声を聞く事があります。
    ある人は、時間をいちいち動かすのが面倒くさいと言い、またある人は、 サマータイムが始まってすぐは早起きが辛くなるなど細かい事を言っていますが、一番文句を言っていたのは 酪農家の方でした。

    「時間が一時間早くなろうがなるまいが、俺たちゃ朝から牛の搾乳しなくちゃならねえ。牛は時間になれば餌をほしがるし、 搾乳してくれって鳴くんだ。人間の都合で牛の体内時計を狂わせちゃかわいそうだろう?」

    身近なところでは、夕方8時でも日が出ているので娘の寝つきが悪いのも問題です。6月ともなれば10時まで明るいド イツの夕方、どうやって寝かしつけようか今から思案するところです。分厚いカーテンでも買ってきて付けた方が良い のかもしれません。

    しかしながら、日照を有効利用することは電気代を節約する事にも繋がる上、エネルギーの無駄遣いが少なくなれば 環境保護にも繋がるでしょう。いいアイデアだと思うのですが、日本の皆さんはどう感じるでしょうか?

    何はともあれ、私は日照が長くなったのを生かして夕方ジョギングをしています。4月22日にはボンマラソンが開催され、 力試しにハーフマラソンに参加しました。
    普段は車が激しく行き交う大通りをたくさんの人と一緒に駆け抜け、沿道のたくさんの観客に見守れながらの ゴールは本当に気持ちがよかったです。

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    乳価高騰          2008年5月

    昨年の春先から上昇し、一時期は2倍近くまでなっていた乳価がここに来てまた下がり始めています。
    酪農家が落胆し、各地でデモンストレーションを起こすなど新聞各紙、農業雑誌でも取り上げられています。
    牛乳1kg当り25セント(ほど)から始まった生産者価格は、昨年の秋にピークを向え、1kg50セント近い値になったところも ありました。これに合わせて酪農家がフル稼働で牛乳生産をしました。ドイツにも牛乳生産枠があるので、過剰搾乳は 課徴金対象になるのですが、それを措いても搾った方が得という勘定があったようです。お陰でここにきて飽和状態になった 牛乳が自然と値崩れし手しまった感があります。

    そもそも、乳価急上昇の原因にも諸説あり、ロシアや中国といった近年発展目覚しいNICsでの粉乳需要の高まりから 上昇したというものや、市場影響力の強いディスカウントショップの意向によるということもあります。

    今年4月の乳製品価格大幅引下げを先導しているディスカウントショップのアルディーが、十分量ある乳製品を安く売ること で、他のスーパーも競争から総じて値下げに踏み切る形になりがちです。

    聞いたところによると、ドイツでは乳製品を特価品の目玉とする習慣があるようで、にわかに沸いた乳製品の価格上昇も、 安定には繋がらなかったと言う事でしょうか。一方で、季節性の価格変動もあるわけで、自然な値動きと合間って 下がっているとも考えられなくもありません。

    一消費者の視点からすれば、乳価が落ち着いてくることで乳製品に手が伸びやすくなり、ありがたいと思う一方、 市場に振り回され続ける酪農家の苦心を思わざるをえません。
    今度、研修生の農場訪問で酪農家の方に会う機会もあります。是非意見を聞かせてもらいたいと思っています。

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    アフタヌーン          2008年6月

    暖かいアフタヌーン、カフェのテラスにしつらえられたテーブルでドイツ人の友人と楽しい時間。
    運ばれてきた紅茶とイチゴトルテが優しい太陽の光を受けていかにも美味しそうです。さあ、皆さん召し上がりましょう、 とフォークをトルテにつき立てた時。

    ≪ブーン≫

    ケーキの甘い匂いに誘われてきたのか、小さなハチがやってきました。
    日本人の友人は悲鳴を上げながら ハチを追い払おうとしています。かたやドイツ人の友人はまるで動じる様子もありません。あんまりにも日本人 の友人が騒ぐので手元にあった新聞でバシッと潰し、また何事もなかったかのようにトルテを食べはじめした。

    ドイツ人はあまり虫を気にしないようです。気にする人もいるに違いありませんが、ケーキにハチが止まろうが、 野外でサンドウィッチを食べている時にハエが寄ってこようがお構いなしの人が多いのです。さらに、パン屋や お菓子屋のショーケースに置かれた砂糖菓子にハチがとまっていることがありますが、それでも皆平然としています。 その無頓着振りにはもはや頼もしささえも覚ますが、多くの日本人がそういう状況を容認できないのではないかと思います。
    きっと虫に対する考え方が違うのでしょう。

    例えば、可愛らしいテントウムシ型チョコレートは納得できますが、それのシリーズでカナブンやゴキブリ型が同列に 扱われてしまうのですから驚きます。
    ドイツ語にも「昆虫」という単語があるのですが、多くの人が日常的には「小さな動物」という言葉を使い、 あらゆる虫を一まとめにしてしまいます。

    天気が良くなるとすぐに外へ出て行くドイツ人達。

    外食やキャンプ、グリルパーティーなんかをやるときには、虫は無視できるぐらいの方がストレス無く楽しい時間 が過ごせるのですね。

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    日本食ブーム          2008年7月

    ヨーロッパで日本食がブームになって久しく、次々と新しい寿司バーや日本食を食べさせるお店がオープンしています。

    雑誌や新聞でも日本食が取り上げられ、健康でお洒落でモダンなニュースタイルの食事として浸透してきています。
    和風の食器や箸も手に入りますし、スーパーに行けば、寿司セットと称して米や酢やまきすを詰めたパックも販売しています。 元来生魚を食べる文化が無かったドイツ人がなぜか寿司を受け入れ、ドイツ全土に日本食が広がったのも不思議なものです。

    一部のドイツ人の中には、日本食を端的に捉え、ダイエットにいいからとか、体にいいからとか言いながら脂ののった サケの刺身を醤油の池の中でしっかり泳がせてから食べている方もいらっしゃるとか。 もちろん人の食べ方にケチなどつけても仕方ない事で、むしろ日本食が多くの人に理解されてきている事に 注目するべきかもしれません。

    5年前、ドイツの魚屋で生食できる魚はあるかと聞けば鼻で笑われたものですが、今では両手を広げてサケ、 タイ、マグロにヒラメと紹介してくれます。それほどにドイツ人にとっても生魚を食べる文化が一般化したということ でしょう。

    ドイツは北海に面する町々が漁場となっていますが、南部ドイツは海から遠く離れており、新鮮な魚を手に入れる のが難しくなります。さらに、いくら生魚を食べる文化が広がってきたと言っても田舎では相変わらず毛嫌いする 人もいるわけですから、地域の需要に応じて魚の取扱い具合も異なり、どこでも新鮮な魚が買い求められるわけで はありません。
    因みに、ボンでは幸い刺身に適する上等のサケが手に入ります。また、数の子やその親(ニシン) も良いものがあり、晩酌の肴にはもってこい。

    あとは旨い日本酒でもあれば完璧なんですがね…。

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    食品添加物          2008年8月

    冷蔵庫の中を整頓していたところ、見慣れない、と言うか、すっかり存在を忘れ去っていたキュウリの酢漬の 瓶がでてきました。確か開封したのは2ヶ月前か…、と思いながら漬け汁に浮かぶキュウリを眺めてみても、 淀みなく旨そうな風なので恐る恐る食べてみると全く傷んだ様子はありません。結局残っていた数本のキュウリを全部 食べてしまいました。
    さらに、2週間前に賞味期限を過ぎたニシンのサワークリーム漬けもあったので同じく 食べてみたところこちらも問題なさそう。一体どんな処理をされたらこれほどに傷まない保存食になるのでしょうか。

    一昔前、防腐剤や化学添加物の危険性や問題点についてマスコミで取り上げられることが多くありました。 普段無頓着に瓶詰めや加工品を購入していると気が付かないものですが、私達の日常の食卓では随分いろいろな 添加物が活躍しています。聞き慣れない化学物質や薬の名前を聞くと不安になってしまうものですが、 これら食品添加物が現代の食生活に与えた貢献も計り知れないものがあるのも事実です。

    欧州では食品添加物を性質や成分ごと分類し、頭にEの付いた番号を与えてリストにしています。 このEはEuropeとEdible(食用)の頭文字であるらしいですが、食品添加物として法律上使用許可されている ことを意味します。この番号(リスト)をE number(E番号)と言います。 例えばカップラーメンの容器の内容を確認すると、E330(酸化防止剤:クエン酸)、 E621(うまみ調味料:グルタミン酸ナトリウム)などが見られます。
    近年は食の安全や衛生が取り沙汰されることが多くなっていますが、自分の目で確かめ、鼻で確かめ 、舌で確かめ、そして胃袋で確かめる賢い消費者になりたいと思います。

    遊園地          2008年9月

    日本なら都道府県ごとにテーマパークや遊園地がありますが、ドイツをはじめヨーロッパの多くの国にはそれほど たくさんありません。その代わり移動遊園地が地方にやってきてたくさんの訪問者で賑わいます。規模や華やかさ では大投資して作られたアミューズメントパークとは比にならないでしょうが、移動遊園地ならではの楽しみがあります。 ひとつにはいつもの町の風景が一変して華やかになること、そして、期間限定で珍しさがあることが人々をひき付ける のだと思います。

    遊園地を組み立てるところなんてなかなか見られないと思いますが、観覧車やジェットコースター、お化け屋敷などが 次々と出来上がってくるのを見ると、こうやって作るのかと感心します。そして出来上がった遊具に電飾が灯り、 音楽が鳴り、楽しげなたくさんの笑顔が生まれるのです。

    毎年9月中旬になるとボンの近郊の町にも移動遊園地やってきて5日ほど楽しむ事ができます。この時の遊具は、 実は10月上旬までミュンヘンで開かれるビール祭り『オクトーバーフェスト』でも使用されるためボンの移動遊園地 を終えると南へ移動していくそうです。これからは業社が一番大忙しの時期なのではないでしょうか。

    ところで、移動遊園地の遊具には驚くべき特徴があります。
    それは、回転する遊具の周りに柵が無く、機械が動いている時にでも進入ができてしまうということです。 危ないの一言に尽きるのですが、意外なほど客は秩序を守り、子供達も決して危険な行為をしようとはしません。 自己責任を重視する欧州らしいとは思うのですが、本来人間は自ら危険な行為をするものではないという無言の『常識』 を突きつけられているようにも思えます。それにしたって遊具の脇を子供が歩くのを見るとハラハラしてしまうわけで、 もしかしたらドイツの移動遊園地では、遊具の外でボーとしているよりは絶叫マシーンに乗っている方が安心かもしないと 思ってしまうのでした。

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    アイフェルのF1サーキット場       2008年10月

    ドイツにもいくつかF1サーキットがありますが、ドイツ南西部のホッケンハイムリンクと並んで有名なのがドイツ 中西部のニュルブルクリンクです。

    毎年F1グランプリが行われる全長4.5kmのグランプリコース(南コース)と、世界で最も厳しいコースとして知られる サーキット北部の全長20.8kmにも及ぶコースがあります。北コースが厳しいと言われる由縁は、コースの高低差が300m もあることや、百数十個のコーナーが最高速度の出せる直線コースと組み合わさりながらマシンの行く手に待ち構えて いるからです。俗に「Grune Holle(緑の地獄)」と呼ばれているのですが、ニュルブルクリンクが激しいコース環境を 持ち自然豊かなアイフェル地方に位置することからこう称されるようになったものです。

    近年のマシン性能(スピード)向上によりこのコースをフォーミュラカーが走るのは危険になったため今ではF1レース をする事はなくなりましたが、24時間耐久レースなどはスポーツカーなどでこの南北両コースを走ることになり、 その全長は世界最長で約26kmにもなります。
    また、北コースは新開発の車のテストにも使われることが多々あり、今年4月には日産GT-Rが7分29秒/一周のコース 新記録を樹立(8月GMのコルベットZR1が7分26秒台を出し記録更新)したそうです。

    なお、近年は某テレビゲームで臨場感たっぷりに北コースを楽しむこともできるそうです。それでも飽き足らない人は、 実際にコース一周数十ユーロで走ることもできます。でも、その際起こった事故による損害は一切自分持ちだと言う 事なのでくれぐれも覚悟のほど。

    ところで、このアイフェル地方というのは今でこそ自然とツーリングとサーキットなどで盛り上がっていますが、 農業に適さない火山土であり、しかも大都市の産業地帯から離れていることから、一昔前まではいわゆる「貧困地域」 のレッテルを貼られてきました。このサーキットは1927年の開設以来この地域の活性化に貢献していることになります。 アイフェルにとって自動車は移動手段としてだけではなく集客材料しても無くてはならない存在になっているのです。

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    医療保険          2008年12月

    ドイツには公的医療保険と個人医療保険があり、公的保険は保険料金が安い分若干の個人負担金がかかります。 一方個人保険では100%医療費を補償して貰える分保険料金がかなり高いのですが、これら保険の最大の差といえば、 医療内容や待遇に大きな差があることです。どういうことかと言うと、個人保険では入院の際個室が使えたり、 診察を優先してもらえたり、院長先生レベルの先生から医療を施してもらえるのです。格差社会になってきている現代社会 を真っ向から肯定するような制度ですよね。

    かたやデンマークでは国民全てが無料で医療を受けられるようになっています。それどころか、田舎で病院が近くにない 場合は医師が家まで来てくれる手厚い医療制度です。しかしデンマークの医者は風邪程度の病気では何もしてくれない 現状があります。命に別状無い事ででいちいち医療費を垂れ流ししていたら診察代無料では割に合わないからです。 また、デンマークの優秀な医師らは稼ぎが良いUSAなどに移住してしまい、ブレインの流出という問題も抱き合わせている ので、手放しで羨ましがる事はできません。

    しかしながら、ヨーロッパで暮していると思うことですが、みんなほとんど病院へは行きません。病院へ行くという事は それなりに重大な状況ということなのです。

    先日突然激しい頭痛があり、夜も寝られないほどだったため大学病院へ行き、早速診察を受けたところウィルス性疾患だと 分かり、大事をとって一日仕事を休ませてもらいました。翌日症状が軽くなったので出勤し、前日連絡するつもりだった人 などに電話連絡すると、「あなたまだ休みなんじゃないの!?」と驚かれてしまいました。それどころか、 「なにやってんのよ」とちょっと呆れ気味で、日本じゃ体調が良くなったら仕事に出るのは当然ですが、 ヨーロッパでは医師の診断を仰ぐほどの状況にあった人間が勝手な自己判断で仕事に復帰するのは変みたいです。

    「病院には井戸端会議をしに来るご老人がいる国」から来た私達日本人にはちょっと分かり辛い常識があります。

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    寒い冬          2009年1月

    欧州には近年まれに見る寒い冬が到来しています。ドイツの中でも比較的温かいここボンもすっかり雪に覆われ、毎朝芯まで 冷えるような冷たい空気の中を出勤しています。そして、日陰に残った雪が踏み固められて氷になって、道行く人の足をす くっています。それでもこわばった顔つきで自転車にまたがって通り過ぎていく頑固者もいるもので、何人もの人がカーブで 滑って転んでいるのを見かけています。

    この凍りついた路面を溶かすために日本ではよく塩(塩化カルシウム)を撒きますが、ドイツでは砂利がまかれることが多い です。防寒靴の深い靴底の溝には雪だけじゃなく小砂利が詰っていて、次の朝靴を履こうとして持ち上げると、ジャリジャリ と玄関先を汚します。スイスなどでは道路にも砂利をまいて氷を溶かす事があり、春先スイスの高速道路を走っていて、 妙にフロントガラスに砂利が跳ね返るものだといぶかしんだ事があります。スイスの高速道路は120km/hの制限速度がありますが、 あんまり早く走るとフロンとガラスにひびが入る恐れがあります。

    塩ではなく砂利を撒く理由は、環境保護を意識している為です。
    塩害による土壌と地下水質の悪化、街路樹や植物生態系へ 影響、ペットの火傷や自動車のさび付きなど、ありとあらゆる被害を考慮した上で、砂利を選んでいます。

    それにしても、真っ白に雪化粧したボンの風景は見事です。ボン大学の建物は普段の黒い屋根が真っ白く塗り変わった様で、 他の建物のようです。雪なんてなかなかまとまって降らないので、みんな大喜びで雪だるまを作ったり、雪合戦をしたりし ています。

    この白いボンの風景が終わり、池の氷が溶けて、緑色が木の枝に宿り、オシドリの親子が楽しく泳ぎだす頃が待ち遠しい今日 この頃です。

    Snow in Bonn
    雪の積もった事務所の前

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    客とキャク          2009年2月

    日本語では「客」という言葉の意味は「カスタマー」と「ゲスト」の両方を意味しますが、ヨーロッパでは明確に差が あります。つまり、何かを買ったり依頼するのは「ゲスト」という客ではなく、「カスタマー」という客なのです。
    それに対して客は客として扱う日本ではその差がはっきりしない気がします。

    ドイツへ来て初めての頃、店員のそっけない態度に腹を立てたこともありました。「客を何だと思っているんだ!」と 思いましたが、客をカスタマーだと思っているのですよね。

    何かを売るのに対して何かを買う人は対等です。勿論買ってもらわなくては商売が成り立たないわけですから、上手く カスタマーを扱うことは必要ですが、ゲストと同じ扱いをする必要はありません。そこが根本的に日本と違う部分だと 思います。

    日本にはおもてなしの心があります。「おもてなし」とは、「裏しかない」つまり本心であるという意味があると聞いた 事があります。客に対しておもてなしの心で向き合うという事は、相手の手の内を探ったり、相手を値踏みするのではなく、 全力を尽くすことにあるのでしょう。そういった点から考えると、日本の客商売というのは精力的で気持ちのいいビジネス だと思います。一方で、ヨーロッパ的感覚からすれば、しなくても良い気遣いまでしてカスタマーにサービスするなんて いうのはナンセンスです。
    しかし、ゲストに対してヨーロッパでは心からのもてなしをします。それは日本の来客に対する態度と同じです。"客"を 区別する社会にいると、ゲストとして訪問した先での温かいおもてなしがくすぐったいほどです。膳こそありませんが、 まさに上膳据膳のおもてなしを受けると、「なんだ、ドイツ人だって優しいところあるじゃないか」と感心したりもするもの ですが、"おもてあり"の社会構造だということを改めて感じる部分でもあります。

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    機械にお任せ          2009年4月

    日本では当たり前の事なのに、外国人からするととても不思議に見えるものがたくさんあります。その中でも、最近ドイツ人 の友人と話をしていて「確かにそうだよね」という話しになったのは、喋る機械たちです。

    自動ドア、自動販売機、エスカレーター、自動湯沸かし器、キャッシュディスペンサーなど、人が近づいたり操作したり すると何かを言いますよね。初めてあれらを見た彼は非常に驚いたといいます。200年も前の人じゃあるまいし、機械が喋っ たって不思議じゃない時代に生きているのだからという話をすると、「見れば分かる事をいちいち言うのはうるさく ないのか?」とのご意見。
    「足元に御注意下さい」「お忘れ物にお気をつけ下さい」「おつりのお取り忘れが―」など、機械たちが私たちの一挙手一投足 を気にかけてくれる日本。

    忘れ物や危機管理はヨーロッパでは自己責任の部類です。イタリアやスペインなどを旅行するとスリ置き引きの被害が大変多 く、そういう世界を知っている人たちからすれば、自己防衛というのはサバイバルする上で最低限の注意力を持つことから始 まるという認識があります。
    例えば、ドイツでは池の辺に立入禁止の札を立てるとき、「立入禁止」とは言わず「ご自身の責任で」と書きます。 「立入禁止」というのは、入ってほしくない場合に使う言葉で、危険かどうかについてはまた違う話になるのです。

    喋る機械たちに話を戻すと、表面上は確かに親切に感じますが、社会の中で暮らせば当たり前の事を音声にしているに過ぎない ともいえます。楽に・安全にを追求した結果、人間じゃない物に責任を押し付けたのであれば、随分と寂しい結果に行き 着いたものです。
    「いらっしゃいませ」や「ありがとうございました」と喋る玄関マットより、お店の人がちゃんと口頭で言ってくれる方が 心に響くと思うのですが、そう思いませんか?

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    ドイツの中のトルコ          2009年6月

    忙しい日常でファーストフードのお世話になることがありますが、ドイツではハンバーガーに並んで (あるいはそれ以上に人気の)ドネルケバブがあります。日本でも見かけるようですが、鶏肉や羊肉をまとめ て巨大な串刺し状にし、回しながら火であぶり、焼けたところからナイフで削り取ってパンに野菜と一緒に挟んで 最後にヨーグルトソースを掛けた食べ物です。トルコからやってきた食べ物ですが、いまやドイツ人の ランチタイムに欠かせない重要なB級グルメです。また似た食べ物で、ギリシャのギュロスという肉料理もケバブ とせめぎ合っています。しかしながら、これらドイツの胃袋を満たすファーストフードには、外国人労働者の 歴史が挟み込まれているのです。

    1950年代からドイツは外国人労働者を積極的に取り込む政策を展開してきました。高度成長期にいわゆる3Kで の働き手を国外(スペインやイタリア、旧ユーゴスラビア)に求めたのです。60年代以降になるとトルコからも 労働者がやってくることになります。

    ドイツという国は確かにドイツ人の国ですが、実に沢山の人種で構成された国です。ドイツが労働者募集を止めた 1973年までの間に、何と1400万人もの外国人がドイツへやってきました。70年代になるとドイツ人の労働力を確保 する事が容易になり、国内失業率上昇を受け、外国人労働者がやり玉にあげられました。中には帰国させられる人 もでてきましたが、ドイツで結婚したり家族ごと移住してもう自分の国に居場所がない外国人おり、彼らはドイツ を第2の祖国とすることになったのです。かれこれ30年以上が経ち、外国人労働者の2世3世がドイツで国籍を取得し 暮らしていますが、積極的に社会融和政策をしてこなかったドイツでは、今になってドイツ語も母国語も中途半端 な子供達が学校や社会で問題になっています。特にトルコ人は非常に多く移住してきており、トルコ人家庭での教 育問題はもはや社会問題です。

    いずれにしても、この半世紀の間に外国人たちはしっかりとドイツに根を下ろし、もはやドイツの住民として暮ら しを確立しています。その間に文化や民族の融合だけはじわじわと広がって行ったに違いありません。その一例が ケバブであり、ギュロスなのです。

    1970年代、ベルリンを中心にケバブのお店が開店していきました。シンプルかつカジュアルなスタイルでありなが らどっしりとした食べ応えのある量と味が受けて、ケバブはドイツ人の舌を着実に魅了していきました。日に200 トンとも300トンとも言われるケバブが生産され、1998年ではケバブだけで15億ユーロの売り上げがあったそう です。

    という事で、日常生活の観点からすればトルコの食文化がドイツを乗っ取って久しいのです!

    さて、ドイツへ留学した人の笑い話ですが、帰国した留学生に「ドイツで一番美味しかった料理は何?」と 聞いたところ、「ドネルケバブだな!」と答えたとか。

    侮りがたしドネルケバブ…。



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